最近の下請法違反事例

 嶋津 裕介

2016年09月01日

<ポイント>
◆ 「開店時販促費」等を支払わせたことが下請代金の減額に該当した事例
◆ 下請事業者のサービス等とは直接関係のない物品の購入を強制した事例
◆ 下請法の趣旨を理解しておくことは、契約交渉で極めて重要

最近、下請法違反があったとして公正取引委員会が勧告を行った2つのケースをご紹介します。
一つは株式会社ファミリーマートに「下請代金の減額の禁止」違反があったとするもの(8月25日付の勧告)、もう一つは冠婚葬祭大手の株式会社セレモニーに「購入・利用強制の禁止」違反があったとするもの(6月14日付の勧告)です。

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、一定の企業規模の格差がある企業を親事業者、下請事業者と定義し、その間の製造委託などの取引の適正を図るものです。
下請事業者の責めに帰すべき事由がないのに親事業者が商品等の受領を拒否すること、返品すること、下請代金を減額することのほか、下請代金の支払い遅延、買いたたき、商品購入やサービス利用の強制などを禁止しています。

ファミリーマートは当然のことながら資本金が3億円を超えているところ、資本金3億円以下の法人事業者に、コンビニで販売する食料品の製造を委託していました。
このとき資本金の基準によって、ファミリーマートが親事業者、当該法人事業者が下請事業者ということになります。

このように下請法が適用される親事業者、下請事業者の関係は、資本金の基準によって、相対的に決まります(法人の種類によっては資本金でなく、出資の総額が基準となりますが、ここでは資本金で代表します)。
資本金の額が1000万円を超え3億円以下の事業者の場合は、資本金の額が1000万円以下の事業者に製造委託等する場合に、前者が親事業者、後者が下請事業者となります。
ただし、プログラミングや、映画、放送番組など情報成果物の作成委託、あるいは、サービス提供の委託の場合は、親事業者側が資本金5000万円を超えれば、資本金5000万円以下の事業者に委託したとき、後者の事業者が下請事業者となります。
情報成果物の作成委託、サービス提供の委託の場合、親事業者側が資本金1000万円を超えても(5000万円以下)、1000万円以下の事業者に委託すれば、後者の事業者が下請事業者となります。
以上は下請事業者側が法人の場合ですが、下請事業者側が個人の場合は、親事業者側の資本金の額が1000万円以上であれば、どんな場合でも下請事業者となります。
ちなみに「親」といっても、出資関係があるなどの親子会社の関係とは違います。

もう一つ下請法の適用範囲を決める重要な要素が、事業者間の取引が「委託」取引であるということです。製造委託でいうと、ある事業者が、自ら品質、形状、規格、性能、デザイン等を定めて他の事業者に製造を依頼すれば、委託にあたります。
納品する側が規格等を定めて販売する場合は、当然、委託にはあたらず、下請法の対象ではありません(場合によっては、独占禁止法上の優越的地位の濫用規制が問題となり得ます。)
ファミリーマートの場合も、同社の企画によるプライベートブランド(=PB)商品の下請代金の減額が下請法違反とされました。
製造委託のほか、修理委託、そして先にも述べた情報成果物作成委託、サービス(役務)提供委託があります。
ちなみに、下請といっても建築工事の下請は含みません。これは建築業法によって別途、類似の規制があるからです。

ファミリーマートは、下請事業者の責めに帰すべき理由(商品に瑕疵がある等々)がないのに、下請事業者20名(当然会社が主でしょうが、勧告で「20名」とあるので、これに合わせます)との関係で、下請代金の額を合計総額6億5000万円減額していました。
減額があったと認定されたのは主には、平成26年7月から平成28年6月までの間、下請事業者から「開店時販促費」、「カラー写真台帳製作費」、「売価引き」との名目の金額を払わせていたということ(その際の振込手数料も負担させたこと)です。
これらそれぞれの名目について8月26日付け日経新聞朝刊によれば、開店後3日間に売れ残った商品の代金の一部、各店舗が閲覧するカタログ(本部への発注用という意味でしょう)の製作費、セール期間の値引き相当額とされています。
勧告を読めば、当然、下請法違反と考えられますが、同社によれば「取引先にもメリットがあり、合意していたので、違反との認識がなかった」とのことです(前記日経新聞朝刊)。
この点、仮に親事業者と下請事業者との間で合意があったとしても、だからといって下請法違反にあたらないということにはならないことに留意が必要です。
それと、会社の認識としては「売価引き」は別として、「開店時販促費」が減額にあたるという意識はなかったということかもしれません。しかし、売れ残り商品の代金、セール期間中の値引き額、カタログ製作費といった本来的に納品を受けて商品を販売する側が負担すべき費用を、納品側が負担するのは、やはり実質的に考えて代金の減額に当たるでしょう。

ファミリーマートに対しては公取委より、減額した代金を速やかに下請事業者に支払うこと、今回の行為が下請法に違反し、今後そのような減額をしないことを取締役会決議で確認すること、発注担当者への研修など体制の整備、自社の役員・従業員への周知徹底、これらの措置をとったことを下請け事業者に通知し、公取委に報告することが勧告されました。ファミリーマートは8月25日付で全額を支払ったとのことです。

もう1件、日本セレモニーは、消費者から請け負う、結婚式のビデオ制作や、冠婚葬祭式の司会、美容着付け、音響操作等の実施を、個人や、資本金5000万円以下の事業者に委託したというケースです。情報成果物作成委託または役務(サービス)提供委託のケースであり、日本セレモニーの1億円(5000万円超)であり、同社が親事業者、委託先が下請事業者として、下請法の適用を受けました。
同社が下請法違反とされたのは、購入・利用強制の禁止違反という点です。下請法は、正当な理由のある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、または役務(サービス)を強制して利用させることを禁止しています。
同社が、購入を求めたのは、おせち料理やディナーショーのチケット等の物品とのこと。下請事業者が提供する成果物やサービスとは直接関係がないにも関わらず、下請事業者に対し、冠婚葬祭式場の支配人や発注担当者から、おせち料理等の購入を求め、下請事業者がこれに応じていました。
なお、法律は「強制して」との要件を定めています。本件では、予め同社の従業員や冠婚葬祭式場毎に定めていた販売目標数量に達していない場合には、再度要請していたとのことで、この点が、仮に断っても、一定数量に達しない限り、購入を求められることから、「強制して」の要件を満たすと判断されたと思われます。購入額は総額で約3300万円でした。
同社に対して、公取委は、購入代金を支払うこと、下請法違反があり、今後同様の違反をしない旨取締役会決議で確認すること、社内体制の整備、役員・従業員への周知徹底、措置をとったことの下請事業者への通知、公取委への報告を勧告しました。

大企業からみれば、下請法の趣旨を社内に周知徹底することが重要ですし、これに違反するおそれがあったときに内部通報制度等によって、その芽を摘み取る必要があるでしょう。
他方で、以前にも書いたことがありますが、中小企業からみれば、納入先が自社との間で優越的な地位にある場合も、この下請法を根拠に契約交渉することは、自社の利益を守るための重要な武器になると考えています。