新元号と商標登録

 井上 彰

2019年06月15日

<ポイント>
◆元号に関する商標審査基準の改訂
◆「令和」に関する出願件数
◆他国での出願状況

1 新元号の制定に関する法令
2019年5月1日から新元号「令和」が始まりました。645年の「大化」から248番目の元号ということです。
元号は「元号法」(昭和54年法律第43号)によって定められます。同法は「第1項:元号は政令で定める。」、「第2項:元号は、皇位の承継があった場合に限り改める。」という2項のみからなります。この第1項に基づき「元号を定める政令」(平成31年政令第143号)が制定され、「元号を令和に改める。」とされました。
2 商標出願の扱い
では、新元号の「令和」「REIWA」「LEIWA」等を商標登録できるのでしょうか。
改元に先立つ平成31年1月、特許庁は「商標審査基準〔改訂第14版〕(平成31年1月30日適用)」を公表しています。
商標法3条(商標登録の要件)第1項各号では、例えば「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」など商標登録できないケースが規定されています。その第6号では包括規定として「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務にかかる商品又は役務であることを認識することができない商標」も商標登録できないとされています。上記審査基準は、この第3条1項第6号に関して、次のとおり規定しています。
「4.元号を表示する商標について
商標が、元号として認識されるにすぎない場合は、本号に該当すると判断する。
元号として認識されるにすぎない場合の判断にあたっては、例えば当該元号が会社の創立時期、商品の製造時期、役務の提供の時期を表示するものとして一般的に用いられていることを考慮する。」
以上のとおり、古いものも含め元号は原則として登録を認めないことを明記しました。もちろん、他の文字を含むなどして例外的に登録が認められるケースもあります。いずれにせよ濫用的な出願が想定されるため、これを回避する目的で改訂したものと思われます。
3 日本で商標出願された件数は?
本稿執筆時である2019年5月28日時点では、新元号が公表された4月1日以降に「令和」「レイワ」「REIWA」「LEIWA」を含む出願は、特許情報プラットフォームで合計90件確認できました。いずれも審査中です。出願しているのは個人・会社を併せて56名。
出願番号が若い順に3件挙げますと「富士令和菌」(商願2019-045518。ユーストーリー株式会社。)、「令和会計社」(商願2019-045519。税理士法人平成会計社。)、「令和蔵」(商願2019-045526。月桂冠株式会社)です。なお、ピコ太郎名義でYouTube上に公表された動画/楽曲「ペンパイナッポーアッポーペン」(略称:PPAP)に関し、「PPAP」等で商標出願しているとして話題になった会社もありましたが、この会社も何件か出願しているようです。
4 他国では?
いずれも日本による新元号公表後の出願で調べたところ、米国では1件(REIWA)、EUでは0件、韓国では3件(reiwa。ただし同一人物による3区分での出願。)でした。また、中国では「令和」を含む出願数が1300件を超えていました。中国は1出願1区分のようですので、日本の場合より件数が多くなります(なお、日本の上記出願を区分数で換算すると707件でした。)。実質日本人による出願のものがいくつあるのかは判りませんが、他国よりも日本の新元号に対する関心は高いのかもしれません。

〔参考URL〕
1.「商標審査基準〔改訂第14版〕について」
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun-kaitei/14th_kaitei_h31.html
2.特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
3.USPTO – Trademark Electronic Search System(TESS)
https://www.uspto.gov/trademark
4.EU IPO
https://euipo.europa.eu/eSearch/
5.Korea intellectual Property Rights Information Service
http://eng.kipris.or.kr/enghome/main.jsp
6.中国商標網
http://wsjs.saic.gov.cn/txnT01.do