整骨院が関与する保険金詐欺

 高橋 英伸

2019年05月01日

<ポイント>
◆整骨院が関与する保険金詐欺が多発している
◆不正が続くと人は感覚が麻痺する

普段は保険金詐欺を摘発する保険会社側で職務を行う場合が多いのですが、少し前に弁護士会の当番で出動したところ保険金詐欺を行った被告人の弁護を経験することができました。しかも、たまたま詐欺に主体的に関与した柔道整復師の被告人質問を傍聴することもできましたので、これらについて紹介したいと思います。

近年、損害保険業界では整骨院が関与する保険金詐欺が大問題になっており、しばしば報道されています。これは、故意または偶然の交通事故が起きて自称受傷者が整骨院に行き、施術内容・通院日の水増し請求ないし架空請求が行われて、整骨院が保険金を詐取し、患者も慰謝料を詐取するというものです。
虚偽内容の発見は容易ではなく、受傷自体、受傷の程度、施術部位・内容、通院日等のいずれが虚偽なのかを調査・検討する必要があります。
また、誰が犯人で誰が無実なのかの見極めも難しく、整骨院は無実で患者が犯人のケース(患者による受傷の申告に虚偽があり、整骨院が騙されるケース)、整骨院が犯人で患者が無実のケース(整骨院が勝手に水増し・架空請求をして患者が巻き込まれる(事後的に共犯者になることもある。)。)、両方犯人のケース、さらに闇ブローカーが介在するケースなど様々です。
いずれにしても、医療同様、基本的には性善説で運営される事業であることや、打撲・捻挫という目に見えにくい症状が扱われることから詐欺が横行しているように思われます。

決して他人事ではないのですが、背景には柔道整復師の激増と過度の競争があります。交通事故のお客さんは整骨院にとって単価が高く長期間通ってくれるありがたい客であるため詐欺の対象となるようです。過度の競争が業界にモラルハザードをもたらすという典型例になってしまいました。

ブローカーから多数の患者をあっ旋されていた柔道整復師の被告人質問を傍聴したところ、「ブローカーに大丈夫と言われたのでやってしまいました。」というような曖昧な供述に終始し、罪の意識が鈍磨して反省の意識が乏しいという印象が拭えませんでした。また、私が知る限りでも再犯を行った者がいます。
日常的に詐欺ばかり行っていると、一回だけ詐欺を行った場合よりも、犯した罪の数は多いのに人は罪だと感じなくなってしまうのではないかと感じています。犯罪とまではいえない組織内の不正なども同様なのでしょう。