改正消費者契約法

 木ノ島 雄介

2017年06月15日

<ポイント>
◆「過量契約の勧誘」が事業者の不当勧誘として追加される
◆不実告知の対象となる重要事項の範囲が拡大される
◆無効となる不当な契約条項が例示される

新聞などの報道でご存知の方も多いと思いますが、平成28年に消費者契約法が改正され、平成29年6月3日から施行されています。消費者契約法は、個人たる消費者と事業者の間に情報力や交渉力の格差があることを踏まえ、消費者の利益保護を図るために平成13年に施行された法律です。今回の改正は、平成18年の改正(平成19年から施行)に続くものです。今回改正した理由は、高齢者の消費者被害が増大していること、これまでの裁判例や消費生活相談事例が蓄積されたことなどを踏まえ、適切な措置を講じる必要があることにあります。詳細は、消費者庁のHPでご確認いただくとして、本稿では今回の主な改正点の概略を述べたいと思います。
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/consumer_contract_amend.html

事業者の不当な勧誘により契約を結んでしまった場合、消費者はその契約を取り消せます。不当な勧誘にあたる場面として様々な場面がこれまでにも定められていました。重要事項について事実と異なることを告げて勧誘すること、事業者が消費者の住居からの退去を求められても退去せずに勧誘することなどです。
今回の法改正では、「過量契約の勧誘」が加わりました。これは、その消費者にとって通常の分量を著しく超える分量であることなどを事業者が知ったうえで販売するなどしたときは、消費者はその契約を取り消せるというものです。一人暮らしの高齢者に対し、ある商品をそれほど使用しないことを事業者が知りながら、大量に販売した場合が挙げられます。
ほかにも事業者の不当な勧誘にあたる場面のひとつとして、前述したとおり、「重要事項」について事実と異なることを告げる不実告知が挙げられます。これまで「重要事項」とは、契約対象の質・用途その他の内容や対価その他の取引条件に限定されていました。たとえば実際にはリウマチに効かないものであるのにリウマチに効くと告げて錠剤を消費者に販売する場合です。契約対象の質という重要事項について事業者が不実告知をおこなったといえ、購入した消費者は契約を取り消せます。
今回の法改正ではこの「重要事項」の範囲が拡大されました。消費者の生命・身体・財産などが害されるおそれを回避するために契約を結ぶことが通常必要であると判断される事情、すなわち契約を結ぶ動機に関する事情についても「重要事項」に含まれることとなりました。たとえば、「建物の柱にひびが入っていて地震が来れば倒壊してしまう」と事業者が消費者に告げて補修工事の契約を結ばせたものの、実際には柱の強度に問題がなかった場合です。この場合、補修工事の質・内容そのものについては真実が告げられていたとしても、柱の強度に問題があることは、その消費者の生命・身体・財産などの危険を回避するために補修工事が通常必要であると判断される事情といえるので、当該事情について事業者が不実告知をしたといえます。それゆえ消費者は補修工事の契約を取り消せます。

その他の改正点としては、消費者に不当な契約条項が無効とされる場面が追加されたことが挙げられます。これまでも、事業者の債務不履行に基づく損害賠償責任などを免除する条項や、契約の解除に伴う損害賠償の予定条項のうち事業者に生ずべき平均的損害を超える部分などについて、無効とされていました。今回の改正で追加されたのは、事業者の債務不履行などに基づく消費者の解除権を放棄させる条項を無効とすることです。
また、これまでも、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされていました。これを前提に今回の改正では、消費者が何もしないことをもって新たな契約の申込みまたは承諾とみなす条項(かつ、信義則に反して消費者の利益を一方的に害しているといえる条項)が無効となるものとして例示されました。たとえば、消費者が異議を述べない限り商品の継続購入が自動更新され、かつ、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であれば、その条項は無効となります。
取消権の行使期間を延長するなど、ほかにも改正点がいくつかありますが、紙面の都合上割愛いたします。消費者からみて契約が取り消せるのか、または無効なのかは、事業者にとっても消費者にとっても大きな関心事でしょうから、判断に迷ったときは法律の専門家に相談することをおすすめします。