携帯電話で証拠を保全して下さい

 高橋 英伸

2018年11月01日

<ポイント>
◆証拠がなければお役に立てません
◆携帯電話で簡単に証拠保全できます

債務不履行、交通事故、労働災害、離婚、言いがかり、盗難・暴行・詐欺その他の犯罪被害など、日常生活には様々な事故・トラブルが潜んでいます。弁護士はこれらの様々なリスクにより損害を受けた被害者の味方です。

しかし、お願いがあります。まず、必ず証拠の保全をして下さい。弁護士が困るのは、被害者が証拠を持っていない場合です。お力になるためには兎にも角にも証拠が必要であって、依頼者にどんなに想いがあっても、共感・同情できる事案でも、証拠が足りない場合はお力になれない可能性が高まります。
弁護士にも一定の調査能力がありますが、何かが起きた後に事後的に調査するものに過ぎません。何かが起きたその時、その場で最良の証拠を保全できるのは当事者であって、弁護士ではありません。

証拠の保全というと大層なことに聞こえるかもしれませんが、非常に簡単にできる時代になりました。何かが起きたら、自身の携帯電話で、関係がありそうな物・文書・音声をひたすら撮影・録音して下さい。書類についてはコピー機による複写がベストですが、文字が読める程度に携帯電話で撮影することでも足ります。書類の写真をプリントアウトすれば書類のコピーと同じ価値の証拠になります(読めれば)。関係者が何かを認めた場合は録音するか一筆取って証拠とします。

依頼者らが見た・聞いたというのも証拠ですが、それだけでは立証できないと考えておいた方が無難です。人は、自分が見たことをSFのロボットのように目から壁に映し出すことはできませんし、聞いたことを録音データのごとく全く同じ内容で再生することはできません。見た・聞いたことについては、「~を見ました」、「~と言うのを聞きました」というように、実際に見たり聞いたりしたものそのものの情報よりも、極めて不正確で少ない情報にして自分の口で説明せざるをえません。再現性の高くない供述証拠は、物・文書などの客観的証拠の間をつなぐ程度のものか、客観的証拠の裏付けなしには証拠とはいえない程度のものです。さらに、供述者の恣意・記憶の不確実性・表現能力などに左右されます。自ずと証拠としての価値は落ちます。
これに対して、携帯電話で撮影・録音すれば、見た・聞いたことをそのまま忠実に何度でも再現できます。

証拠は、自分の目・耳で保全するのではなく、所持している携帯電話で保全して下さい。ただし、臭いと味と触感については未だに鼻と舌と皮膚感覚に頼らざるを得ません(これらの情報が必要となる場面はかなり限定的ですが)。