市営住宅の暴力団排除条項は憲法に違反しない

 高橋 英伸

2015年11月01日

<ポイント>
◆公営住宅の暴力団排除条項にかかる初の最高裁判断
◆暴力団員であることを理由として明渡しを請求できることは法の下の平等、居住の自由の規定に違反しない

2015年3月27日、最高裁は、西宮市が暴力団員の入居者に対して建物の明渡しを求めることができるとの同市条例の規定は合憲であるとの判断を示しました。従来から、暴力団員という身分を有する者についてのみ契約締結を拒否したり、契約を解約できるとすることは憲法上の問題があるのではないかという議論がありました。本判決は、地方公共団体という公権力が暴力団員に対して不利益を課すものとして、憲法違反性が正面から争われた事案であり、公営住宅の暴力団排除条項に関する初の最高裁判例とのことです。
(なお、民間対民間の問題としては、2013年7月15日号において、暴力団であることを理由に金融機関が口座の開設を拒否できる規定を有効と判断とした大阪高裁の判断を紹介しています。)

西宮市営住宅条例は、入居者が暴力団員であることが判明した場合には市営住宅の明渡しを請求できるとの規定を設けています。暴力団員である上告人は、同規定は、合理的な理由のないまま暴力団員を不利に扱うものであるから、法の下の平等を定める憲法第14条1項に違反し、かつ、居住の自由を定める第22条1項にも違反すると主張しました。

これに対して、最高裁は、次のように理由を述べて、条例の規定は憲法に違反しないと判断しました。

・地方公共団体は、住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることから、住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として、住宅の供給等に関する施策を策定し、実施する。そこで、当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどのようなものとするのかについては、その性質上、地方公共団体に裁量がある。
・暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合、他の入居者の生活の平穏が害されるおそれがある。
・暴力団員は、自らの意思により暴力団を脱退し、暴力団員でなくなることが可能(前述の大阪高裁判断でも同様の指摘あり)。
・暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても、それは当該市営住宅に居住することができなくなるというにすぎず、当該市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない。

この最高裁の憲法判断により、民間同士の契約における暴力団排除条項の有効性(一当事者の事業の公共性を理由に、憲法に違反する契約内容は公序良俗に反し無効であるとの主張がしばしばされていた)もより確固たるものになったと思われます。