妻の相続権に関する民法改正作業

 片井 輝夫

2014年01月15日

<ポイント>
◆妻の法定相続権を拡大する民法改正作業が始まる。
◆妻の相続分拡大や居住権の保護が検討対象

報道によりますと、法務省は、配偶者への相続拡大を検討する作業チームを平成26年1月に設置する方針を固めたそうです。家事や介護の貢献に応じた相続分引き上げや、遺産分割に伴って自宅から退去させられないようにする居住権保護の明確化が焦点で、平成27年1月に民法改正を念頭に置いた新制度案をまとめるそうです。

我が国の相続制度は、遺言があるときは、原則として遺言に従うことになりますが、遺言がないときは、法定相続分に応じて相続します。現実には、遺言書を書く人はさほど多くはなく、法定相続により相続人が遺産の分割方法を協議して定めることが一般的です。法定相続制度は、法律によって相続分が定められており、ある意味画一的な処理となります。そこで、死亡する順番や親族関係によって棚ぼた式に思わぬ人に相続がなされ、結果的に公平を欠くような事例も発生します。
配偶者の相続で、具体的にどのような場合に問題が生ずるかを事例を挙げてみます。

妻Aさんは夫Bさんと40年以上結婚生活を送っていました。AB夫婦には息子Cがいましたが、Cは遊び人でAさんやBさんとは長く音信が不通でした。Bさんは脳梗塞で倒れて10年以上寝たきりとなりましたが、AさんはよくBさんの面倒を見ていました。自宅はBさんの所有ですが、預金はわずかでした。そういう状態でBさんが亡くなったところ、Cさんが現れて自分は子として2分の1の相続権があるから、家を売って半分を渡せとAさんに要求しています。
現在の民法の規定では妻Aさんの相続分は2分の1、子Cさんの相続分が2分の1です。現在の民法でも、2分の1ずつ遺産を分割する協議をする際には、「寄与分」といって、財産増加や維持に特別に貢献したという場合には斟酌される制度があります。しかし、寄与分の制度は、単に長年同居して精神的に支えたというようなことはあまり考慮されませんし、寄与分をどういう基準で斟酌するかの基準も明確とはいえません。上記の例の場合などで、Aさんの貢献を考えると、Cさんと2分の1ずつというのはいかにも不合理ですし、年老いたAさんから住まいを奪うことも明らかに公平を欠きます。

相続制度をどうするかというのは、家族制度や家産に対する国民の考え方、慣習、老後の扶助制度の充実など様々な社会的経済的要因が関係しています。我が国では、核家族化が進み老親との同居が疎まれる傾向にある反面、世界有数の長寿国家となり、老後が長く配偶者死亡後残された配偶者の生活に不安が多い時代になってきています。こういった現状に鑑みると、配偶者が長年同居して連れ添っている場合などでは、同居年数に応じて法定相続分を増加させるのもいい方法だと思います。残される配偶者の老後の生活は、まずは死亡配偶者の遺産から賄わせるほうが合理的であるし、亡くなる配偶者の意思に合致すると考えられます。国としても、老人に対する公的扶助費の負担を軽減できることになります。

これと同じように、子が親と長年同居しているという場合は、同居の子の相続分を引き上げるというのもいい方法かもしれません。これによって、直接的には親の財産の維持や増加には貢献していなくとも、親と同居して長く精神的に支えている子には、そうでない子との間で相続に際して差異を設けて当然だと思います。例えば、通算して10年以上親と同居したらほかの兄弟の倍、20年以上同居の場合は3倍というようにです。

健全な家族関係の構築や、安定した老後の保障に繋がる改正になって欲しいものです。どういう改正案が出てくるか注視したいところです。