告訴、告発、被害届とは

 高橋 英伸

2013年03月15日

<ポイント>
◆告訴・告発・被害届の違い
◆捜査機関が告訴等の受理を断ることがある
◆被害の申告については、弁護士への相談、依頼が有効

告訴、告発は犯罪事実を捜査機関(検察及び警察)に申告し、犯人の訴追を求める意思の表示です。告訴と告発の主な違いは次のとおりです。

まず、訴追を求める主体が違います。告訴は被害者あるいはその法定代理人や親族が行うものであり、告発は第三者が行うものです。なお、公務員には犯罪があったと考える時には告発をしなければならない義務が課されています。

また、法律上、告訴がなければ犯人を刑事裁判にかけてはならない罪があります。これを親告罪といいます。例えば、強制わいせつ罪等の性犯罪や名誉毀損罪などは、第三者が勝手に犯罪事実を捜査機関に申告して事件が公になると被害者が不利益を被る可能性があることを考慮して親告罪とされます。また、それらとは理由は異なりますが、器物損壊罪等の比較的軽微な犯罪や親族間の窃盗などの犯罪も親告罪とされています。

最後に、強制わいせつ等の一部の犯罪を除き、親告罪に関する告訴は犯人を知った時から6ヶ月以内にしなければならないとされています。他方、告発にはそのような時間的制限はありません。

告訴、告発と似たものとして被害届があります。こちらも犯罪事実を捜査機関に申告する手続であることは同じですが、犯人の訴追を求める意思を含まない点で告訴、告発と異なります。
また、犯罪事実の申告がされた後の捜査機関の義務にも違いがあります。被害届は、捜査機関が犯罪の発生を知って捜査を始める手段という位置づけにすぎず、被害届が出されたからといってその犯罪について捜査がされるとは限りません。
他方、告訴、告発の場合は、それを受理した警察は必ず捜査をして、検察官に事件記録を送る(いわゆる書類送検)をしなければなりませんし、検察官には被疑者を不起訴処分にする場合、それを告訴等をした者に告げる義務などが発生します。つまり、告訴、告発の場合には、被害届の場合と違い、捜査機関が申告された事件を放置することは許されていません。

被害者等が告訴、告発あるいは被害届をしに訪れた場合、法律上、捜査機関はそれらを受理する義務があります。もっとも、現実には事実上、受理を拒否される場合が少なからずあります。
拒否の理由として捜査機関は、証拠が不十分とか、それでは犯罪にならないとか、民事の解決を先行すべきとか、警察は民事に関与できないというような理由を挙げます。

確かに、相談の中には現行法上犯罪になりえないものとか、被害者の憶測ばかりで証拠らしきものが全く見あたらないものとか、もっぱら被害者と称するものが民事上の有利な解決を目的としておどしの手段として告訴等を利用しようとしているものなどが含まれるかもしれません。
しかし、少なくともそのような理由で受理を拒んでよいということにはなっていませんし、現実にはもっぱら警察側の業務が増えるという理由で受理が拒否されているものが少なくないように思われます。

刑事事件に関して素人の被害者が、自己の受けた被害がどの犯罪に当たるか判断するのは必ずしも容易ではありませんし、まして警察の満足する証拠をそろえて被害を申告できるはずはありません。
さらに、被害者が告訴等をする目的に民事上の有利な解決を図る目的が多かれ少なかれ含まれるのはむしろ通常と思われます。なぜなら、加害者に対して民事上の損害賠償を求める権利が犯罪の被害者に認められることは当然であるところ、告訴等をしなければ悪質な加害者に捨て置かれて泣き寝入りせざるをえなくなることが多々あるからです。また、横領行為が続いている場合など犯罪が現在進行中である場合も多く、そのような場合には民事上の賠償以前に、犯罪事実を捜査機関に告げて捜査してもらい、犯罪を止めるところから始める必要があります。告訴等は、現在進行中の犯罪を止めるためには相当有力な手段と思われます。
いずれにしても、告訴自体が明らかに脅迫の手段になっているというような極めて例外的な場合を除けば、捜査機関が告訴を受理しないことは許されないと思われます。

もし、被害者が告訴や被害届をするかしないか迷っていたり、あるいは、ぞれらを捜査機関が受理してくれず困っている場合には、弁護士に相談するとよいでしょう。どういう犯罪が問題となるか、また、現時点でどの程度証拠がそろっているかを教えてもらえます。また、場合によっては弁護士に告訴状等の作成及び提出を依頼するのも有用です。弁護士は、できるだけ捜査機関が受理しやすいように書面の作成や証拠の整理をしてくれますし、必ず告訴状等を捜査機関に受理してもらいます。