医療法人の理事長が社員総会・評議員会を招集しないとき

 森田 豪

2016年06月01日

<ポイント>
◆医療法人では理事長が総会・評議員会の招集を怠っていても、社員・評議員が自ら総会を招集することはできない
◆違法・不正を指摘するために監事には総会・評議員会の招集権限がある

医療法人の理事長が、本来ならば社員総会や評議員会を招集しなければならないのにこれを怠っているという場合、社員や評議員は何か手の打ちようがあるでしょうか。医療法人内部で対立が生じている場合、解任されることを避けようと理事長が会議の招集を怠ることがありえます。

こうした場合、株式会社であれば法律に規定があります。総議決権の3%以上を有する株主は取締役に対して株主総会の招集を求めることができ、それにも関わらず取締役が総会を招集しない場合には、株主は裁判所の許可を得て自ら総会を招集することができます。
一般財団法人の社員総会、一般財団法人の評議員会についても同趣旨のルールが法律におかれています。

医療法人の準拠法である医療法をみると、社団たる医療法人の理事長は5分の1以上の社員から求められたときは社員総会を招集しなければならないとされます。財団法人たる医療法人において5分の1以上の評議員が求めたときについても同様です。
しかし、理事長が招集を怠っている場合の手当ては何らおかれておらず、社員や評議員の招集権限も定められていません。
こうした規定になっていることについて、司法の介入を想定していないからとか、行政による監督が期待されているからというようなことが言われることがありますが、単純に法の不備というべきでしょう。

医療法のなかで関係しうる他の規定をみていくと、監事(会社でいえば監査役に相当します)の権限として、医療法人の業務・財産につき不正・違法があるときは社員総会・評議員会へ報告すべきこととされ、この報告を行うため必要なときは監事が社員総会・評議員会を招集できることとされています。
監事の招集権限に関連する裁判例では大阪地裁平成26年9月5日判決があります。理事の違法行為を知った監事がその報告を行うために議題を「監査報告書並びに関連事項について」として社員総会を招集し、この総会で動議により理事の解任決議がなされたケースです。
裁判所はこのケースにおいては議題の「関連事項」には理事解任の動議も含まれるとして、解任決議が有効になされていると判断しました。
担当裁判官は、報告事項のために招集された社員総会において、報告事項にとどまらずに一定範囲で決議を行うことができるということを判断の前提としています。

裁判所の判断は、「報告をするため」の招集権限であるという条文の字句からはやや離れますが、監事が招集した社員総会や評議員会では報告しか取り上げることができず、是正措置のために必要な決議を何ら行うことができないのでは、違法・不正行為が野放しになる懸念があります。法の不備をふまえた救済的解釈としてはありうる範囲内でしょう。