出光の株式発行差止事件 主要目的ルールとは?

 森田 豪

2017年08月01日

<ポイント>
◆裁判官は「主要目的ルール」により判断
◆支配権維持と資金調達のいずれが主要目的であるか微妙な事案
◆出光側勝訴とはいえ、裁判官の判断は経営陣にとって厳しい指摘を含む

出光興産による公募増資を差し止めようと創業家側が仮処分を申し立てていましたが、東京地裁、東京高裁ともこれを認めず、公募増資は実行されました。
裁判所はこの件の各事情をいわゆる「主要目的ルール」にあてはめて結論を出しています。
主要目的ルールというのは、経営陣の支配権維持を主要な目的としてなされる株式発行については、付随的に資金調達などの正当な目的が併存しているとしても不公正発行として差止事由ありとする法律論です。
実際の適用場面においては、経営陣側が合理的な資金調達目的を説明すれば、支配権維持が主要目的であると裁判所に認定されることは必ずしも多くないといわれています。

今回の仮処分事件では地裁、高裁とも裁判官の判断はほぼ同趣旨であったようです。
経営陣側は公募増資の資金使途として、今後の事業展開上必要な戦略投資資金と、昭和シェル株式を取得した際の借入金の返済を挙げています。適時開示を参照したところでは、増資による調達資金額は概算1385億円、そのうち約522億円程度を戦略投資資金に、残額約863億円を借入金返済に充てるとされています。
裁判の結論自体としては会社側勝訴ですが、裁判所の認定内容は経営陣に厳しい内容を含んでいるようです。経営陣側には、創業家との争いにおいて有利な立場に立とうという不当な支配権維持の目的もあったとされています。(ただ結論的に主要目的とまでいえない)
また、経営陣側が主張する資金使途のうち借入金返済については必要性ありとされたものの、戦略投資については「必要性・合理性なし」という経営陣に厳しい認定がなされました。
資金調達額のうち少なからぬ割合を占める「戦略投資」なる資金使途を裁判官が否定したところをみると、支配権維持と資金調達のいずれが主要目的であるのかは微妙な判断であったものと考えられます。第三者割当によらず、経営陣の支配権を維持する方向での作用が間接的な公募増資によるという点も考慮して、裁判官は、経営陣側の支配権維持が主要目的であるとまで言い切れないと判断したのでしょう。