内部通報制度に関する規程(その2)

 梅本 弘

2014年02月15日

<ポイント>
◆通報窓口には「社内窓口」と「社外窓口(弁護士窓口)」の両方を設けることが好ましい
◆通報の方法は電子メールが最も効率的で、対話やフィードバックにも便利
◆通報窓口は通報者に速やかに受理した事実を伝え、必要な対話を行う

6 内部通報受理窓口

例えば、次のように記載します。
「内部通報窓口は、①法務部内に設置する「社内窓口」及び②会社が指定する「社外窓口(弁護士窓口)とする。」
企業グループが数社あるいはそれ以上ある場合、各社ごとには通報窓口を設けず、企業グループの「統轄窓口」が設けられる場合があります。
この場合も、「統轄社内窓口」と「統轄社外窓口(弁護士窓口)」を設けるのが普通です。
これとは別に、専門の内部通報受託会社というものもありますが、これは機能が異なるため、本連載では説明を割愛します。

「社内窓口」を社内のどこに設置するかは各社の事情によって異なります。
多くの場合、法務部内(内部通報事務局)に置かれると思われますが、ほかに、総務部、内部監査室、人事部、社長直属のコンプライアンス推進室、監査役などに置かれる場合もあり、また、内容ごとに複数の窓口を設ける例もあります。
内部監査室は、日常的に監査業務を担当するので、通報受理後の事実調査にそのノウハウを活用できるというメリットがあります。
人事部は、セクハラ、パワハラ等の通報にどこかの段階で関与することが多いので、その分野では効率的と言えます。
監査役は会社のガバナンス上立場を異にするので通報受理窓口としては適切ではありません。
社外窓口(弁護士窓口)を置かずに社内窓口のみで対応している会社も少なくありません。しかし、前にも述べたように、社外窓口(弁護士窓口)には大きなメリットがあり、設置しないという選択肢は今や考えられません。コストの問題はありますが。
社外窓口(弁護士窓口)の具体的表示、つまり、弁護士(法律事務所)の住所、氏名、メールアドレス等については規程の本文中に表示してもよいのですが、規程末尾の「付則」に表示する、別の伝達・広報の方法で発表する、などの選択肢もあります。

7 通報の方法

例えば、次のように記載します。
「内部通報の方法は、電子メールを原則とし、それが困難なときはファックスまたは文書とする。事前相談の場合は電話によることも可とする。」
通報者にとって便利なように、電話、ファックス、文書、面談(口頭)などを含め、「どういう方法でもOK」というルールもあり得ますが、上記例文はかなり限定的なルールとなっています。
限定的にするメリットは、効率性、正確性、秘密性、コストパフォーマンスなどを点にあります。電話で言えば、特定の部屋、録音装置、反訳の労力、会話を想定する場合は時間と人と場所などの問題があります。また、ファックスは、誰でも閲覧できないように、特定の場所を用意する必要があるなど、管理に注意を要します。
「事前相談」(その内容については本連載の該当記事を参照してください)は、通報の受理に至る前段階でもあり、社外窓口である弁護士との会話が主になるという前提で、電話でも上記のような配慮は不要と考えられます。
なお、情報セキュリティの観点からメール(インターネット)に消極的な企業もあります。

8 匿名通報

匿名による内部通報を認めるかどうかについては両方の考え方があることは前に述べたとおりです。当連載の立場は、それを認めないことを基本とし、但し、その補完措置として、「社外窓口(弁護士窓口)」を利用し、そこには氏名等を明らかにしつつ、そこから会社に対しては匿名で手続を進める「会社へは匿名」という方法を提唱しています。
その場合の記載としては次のようになります。
「通報者が氏名・連絡先等を明らかにしない匿名の通報は本内部通報制度による通報とは扱われない。但し、社外窓口(弁護士窓口)に通報し、同弁護士に対して氏名等を明らかにしたうえ、弁護士から会社に対してはそれを秘匿するよう同弁護士に求めたときは、内部通報として受理される。この場合、同弁護士は通報者の同意を得ずに会社に対し通報者の氏名等を告げてはならない。」
ほかの表現としては、「匿名での内部通報も受理される。但し、調査の過程・是正措置等について通報者へのフィードバックすることは困難となる。」

9 通報を受けた窓口の初期対応

社内・社外を問わず、内部通報を受理した窓口担当者は、匿名通報でないかぎり、速やかに通報者と一定のコミュニケーションをはかります。その内容としては、①通報を受理した事実を告げ、②通報内容に不明確な点があればそれを確認し、③(社外窓口の場合は)「会社へは匿名」を求める通報者には最大限それを尊重することを約束し、④問題事象の追加情報や職場での通報者探し・嫌がらせ等があればそれを連絡するように求め、⑤事実調査等に関する通報者の意見や要望を聞き取ることなどです。
規程としては、これらを抽象的にまとめ、例えば次のように表現することができます。
「内部通報を受けた窓口担当者は(社内・社外を問わず)速やかに通報者に対し、内部通報を受理した事実を伝えるとともに、通報内容の不明な点を確認し、事実調査に関する通報者の意見・要望を聴取するなど、必要な対話を行うものとする。社外窓口(弁護士窓口)の場合、「会社へは匿名」を求めた通報者に対しそれを最大限尊重することを表明する。」

10 社外窓口(弁護士窓口)から社内窓口への連絡

社外窓口(弁護士窓口)が内部通報を受理した場合、その弁護士は社内窓口に対し、内部通報を受理した事実及び通報内容の概要を連絡します。但し、単なる中継ではありません。通報者が「会社へは匿名」を求めた場合はそれを尊重することはもちろん、受理後通報者と交わした対話内容を含め、必要な情報を社内窓口に伝達します。但し、通報者が希望しない、または通報者の不利益になるおそれのある内容は除外したり、婉曲な表現にとどめたりします。また、以後の事実調査に関し意見を述べることも行います。
以上の仕組みを前提とすれば、規程としては例えば次のような表現となります。
「内部通報を受けた社外窓口の弁護士は、速やかに社内窓口に対し、内部通報を受理した事実及びその概要を連絡する。その際、通報者が「会社へは匿名」を求めた場合はそれを尊重し、その他通報者が希望しない、また通報者の不利益になると思われる内容は伝達しないものとする。また、以後の調査等に関し意見を述べることができる。」