内部通報に関する事実調査の方法

 池田 佳史

2013年09月01日

<ポイント>
◆事実調査の方法、担当者等は社内窓口が立案、提案する
◆事実調査の中心は関係者からの「聞き取り調査」(ヒアリング)
◆ほかに、業務日誌の点検、アンケート、関係先への照会などの方法がある

内部通報を受理した場合、まず着手しなければならないのはその通報内容の詳細な把握です。通報により把握できるのは最初の情報(端緒たる情報)に過ぎず、その後必要な事実調査を実施し、情報を追加、整理することによってはじめて事実の全貌を把握することができます。

どういう方法で事実調査を進めていくかを検討するのは一次的には社内窓口です(多くは法務担当部署内)。しかし、どんな場合でも社内窓口において決定し実施できるわけではありません。問題が企業にとって重大な問題を含み、高度の判断を要する場合などは、上位組織に、最終的にはコンプライアンス推進部門、内部統制担当部門などを統轄する担当取締役や社長に判断、決裁を仰がなければならないこともあります。

事実調査の方法・手段の中で最も重要で、大半の時間を要するのは関係者からの「聞き取り調査」(ヒアリング)です。従って、以下では、「聞き取り調査」を中心にその対象や方法、実施担当者について説明していきます。

まず、「聞き取り調査」の対象となるべき部署や人物について。
(なお、「聞き取り調査」を実際に行う担当者については次回に説明します。)
①通報者
通報者が一応わかっている場合は、通報者自身から「聞き取り調査」を開始するのが基本です。匿名通報の場合は、少なくとも当面は「聞き取り調査」をすることができません。
通報者が規程上内部通報をできる者であるか、また他人が通報者に「なりすまして」通報したものではないか、などの形式的なことを確認したうえ、通報の実質的内容について、本人からよりくわしい説明を受ける必要があります。
②被通報者(通報対象者)
通報者から、違法行為等の行為者と名指しされた人物のことを以下「被通報者」といいます。
すぐにこの被通報者に対し「聞き取り調査」を実施するかどうかは別ですが、ある時点では当然その対象になります。
なお、被通報者に知らさずに調査をすることは人権上問題があるという指摘もあります(とくに外国で)。
③被通報者の違法行為等について情報をもっている可能性のある社員
いわば「参考人」です。被通報者と日常的接触が多い同じ職場の社員などです。その中には被通報者の行為を「見て見ぬふり」していた社員もいるかもしれず、また、被通報者との共犯が疑われる社員が含まれているかもしれません。
④被通報者の上司
当然③にも該当しますが、とくに組織上、人事管理上の責任者として、被通報者やその周囲の社員の言動をよく知っている人物です。それだけでなく、上司として部下の監督責任を果たしていなかった場合、実は通報者の行為を察知、黙認していた場合、さらに共犯関係が疑われる場合もあり得ます。
なお、次回述べるように、被通報者の上司は、自分が「聞き取り調査」を受ける立場になるだけでなく、部下である被通報者に対し「聞き取り調査」を行う立場になることもあります。
⑤問題部署以外の社員
例えば、人事部、経理部等の社員、労働組合の役職員、社宅の管理者など。
なお、後日の処分なども視野に入れ、人事部などとのコミュニケーションは欠くことができません。
⑥社外の関係者
親密な取引先、競合会社の社員、警察、労基署、出入りの飲食店など

次に、事実調査の方法として、関係者からの「聞き取り調査」以外に考えられる方法をあげておきます。
これらに関する立案や実施を担当するのも基本的に社内窓口です。但し、前記と同様、必ずしも単独で実施できない場合もあり、関係部署や上位の役職者と協議しながら進めることになります。

①関連先への照会
社内・社外を問わず、直接面談して「聞き取り調査」をすることが困難または不適切な場合、文書などで問い合わせをし、回答を得るという方法があります。
②アンケート
例えば、パワハラや喫煙被害を訴える内部通報などの場合、それが通報者の主観的被害感情なのかその職場の多くの社員が悩んでいることなのかが必ずしも明らかでない場合があります。
昨今の学校の体罰事件、柔道連盟の問題などでもこの方法が取られました。
③業務日誌・帳簿・交際費等の点検
競合会社との談合のための会合や不正経理などはこのような方法で調査することがあります。
④社用のパソコンや電話の記録の点検
但し、プライバシーの侵害にならないように配慮する必要があります。
⑤本人または関係者からの陳述書、弁明書、始末書等の提出
「聞き取り調査」の延長上でとられる方法です。調査終了時の処置としても必要になることが多いと思われます。
⑥まれなケースでしょうが、興信所や探偵を利用して調査することもあります。