債権法改正(債権譲渡)について

 吉本 達哉

2018年06月01日

<ポイント>
◆債権譲渡禁止特約は債務者にとって利益になるが問題点もある
◆同特約について債務者の利益を保護しつつ問題点を解消する考え方に基づき法改正がなされた
◆2020年4月1日以後に債権譲渡の原因である法律行為がなされた場合に改正法が適用される

債権法改正について前回の消滅時効に引き続き、今回は債権譲渡を解説します。
現行法では、債権は原則として自由に譲渡できるものの、債権者と債務者との契約で債権譲渡禁止特約があった場合、債権者がその禁止に違反して債権を譲渡しても、その譲渡は無効と解釈されています。ただし、債権譲渡禁止特約について債権の譲受人(その他の第三者)が善意かつ無重過失であれば、債務者は譲受人等に対しその特約を対抗することができません。つまり、債務者は債権譲渡が有効という前提で、譲受人に支払わなければならなくなります。
債権譲渡特約は債務者にとっては支払先を固定できるというメリットがあります。債権譲渡による事務的な煩わしさを避けることができ、過誤払いを防ぐことができます。
しかし、債権譲渡禁止特約違反の債権譲渡が無効となると、債権者にとっては債権譲渡による資金調達が難しくなります。

そこで、債権譲渡による資金調達のメリットを生かしつつ、債権譲渡禁止特約による債務者のメリットは保護するとの考え方で、法改正がなされました。具体的には、
(1) 債権譲渡禁止特約に違反する債権譲渡も有効である、としたうえで
(2) 債権の譲受人がその特約について悪意または善意重過失(悪意・重過失)である場合に、債務者は譲受人に対する支払を拒絶することができる、とされました。

ただし、このような規定だけならば、譲受人が債権譲渡禁止特約について悪意・重過失である場合、債務者が譲受人からの請求に対しては、(2)により譲受人の悪意・重過失を理由に支払いを拒み、他方で、元の債権者(債権の譲渡人)からの請求に対しては、(1)により債権譲渡自体は有効だとして、支払いを拒むことができることになりそうです。そこで、
(3) 履行遅滞に陥っている債務者に対して譲受人が相当期間を定めて債務の履行を催告し、債務者よりその期間内に履行がなければ、(2)の規定を適用しないとされました。
これにより、債務者は譲受人に対する支払を拒絶することができなくなります。

債権譲渡については債権法改正の施行日(2020年4月1日)以後に債権譲渡の原因である法律行為がなされた場合に、改正法が適用されます。

法改正による実務への影響については次回の解説とします。