債権法改正(保証分野)について

 吉本 達哉

2018年02月01日

<ポイント>
◆債権法改正には、従来のルールの明文化と新しいルールの創設がある
◆事業のための貸金等債務の個人の保証について手続きが厳格化した
◆主たる債務者の情報提供義務が新設された

平成29年5月26日,民法の一部を改正する法律(いわゆる債権法改正)が成立しました。
この法律の施行日は2020年4月1日なので、それまでに改正後のルールを知っておくとスムーズに対応できると思います。

債権法改正の中身を見ると、改正の種類は大きく2つに分けることができます。
一つは、学説で一般に認められてきたルールや判例を明文化したものです。
もう一つが、従来のルールを変更して新たなルールを創設するものです。
特に後者については今までと異なる実務対応を要請されます。
そこで、その内容をよく知っておく必要があります。

今回は保証に関する新たなルールについてご説明します。
事業のためのお金を会社に貸して、それを個人に保証してもらうという典型的なケースを想定しています。

改正前でも保証契約は債権者と保証人との間で書面でしなければならないとされていましたが、それで足りるとされていました。
加えて今回の改正で「事業のために負担した貸金等債務」を「個人」が保証する場合には、保証人になろうとする者が、保証契約の締結に先立ちその締結の日の前1ヶ月以内に、保証債務を履行する意思を表示した公正証書を作成しなければならないとされました。いわゆる根保証をする場合も同様です。

ただ、公正証書で意思確認をするとなれば、公証人の手数料などのコストがかかります。
そこで、改正民法は、いくつかの例外を設けています。
代表的なものをあげますと、主たる債務者が、法人である場合の理事、取締役、執行役又はこれに準ずる者が保証をする場合には、公正証書で保証債務を履行する意思を確認する必要はないとされています。
事業のために金銭の貸し借りをする場合、借主の経営者を保証人にすることが多いですが、その場合には、改正前どおり保証契約を書面で結べばよいということです。
1点注意しなればならないのが、引退後の創業者や経営者など、登記上は理事、取締役等ではないが、実質的な支配力を有する者を保証人にする場合です。
このような者でも、主たる債務者の総株主の議決権の過半数を有する場合等は、公正証書で保証債務を履行する意思を確認する必要はありません。

よって、2020年4月1日以降、個人に事業のための貸金等債務の保証をしてもらう場合には、その個人が契約締結前に公正証書での意思確認が不要な保証人にあたるかを調べる必要があります。

最後に、新設された主たる債務者の情報提供義務の規定についても触れておきます。
主たる債務者が、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証等の委託をするときは、委託を受ける者(保証人)に対し、財産や収支、主たる債務以外の債務の状況等についての情報を提供しなければならないとされました。
主たる債務者がこれらの情報の提供を怠ったり、あるいは事実と異なる情報を提供したりすることによって個人が保証人になった場合で、債権者がそのことを知っていたあるいは知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます。
主たる債務者の義務を新設した規定ですが、債権者も後々のトラブルを避けるために保証契約書を再検討する必要があります。
具体的には、保証人が主たる債務者から情報提供を受けたことを確認する条項及び主たる債務者がその情報提供の内容が事実であることを確認する条項を契約書に加えておき、保証人の認識について確認するようにするとよいでしょう。