債権法改正(不動産賃貸借1)について

 吉本 達哉

2018年09月15日

<ポイント>
◆賃貸人が修繕義務を負わない場合が明確になった
◆賃借人の修繕権には特約による対応が必要
◆原状回復義務の範囲が明確になった

今回のテーマは、2020年4月1日に施行される民法改正(いわゆる債権法改正)による不動産賃貸借への影響です。
法改正による変更点が多い分野なので、本稿から何度かに分けて解説を行います。
なお、改正法は、2020年4月1日以降に契約が締結された不動産賃貸借に適用されます。

1賃貸人の修繕義務
改正前と同様に、賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います。
ただし、改正法により、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になった場合には、賃貸人は修繕義務を負わないとされました。
これにより賃借人に故意や過失がある場合には、賃貸人が修繕の義務を負わないことが明確になりました。
もっとも、裁判になった場合、故意や過失の立証責任が賃貸人にあることには要注意です。

2賃借人の修繕権
賃借人が賃借物を修繕する権利に関する規定が新たに設けられました。
賃借人は、修繕が必要な場合で、かつ、次のいずれかに該当するときは、賃借物を修繕することができます。
(1)賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
(2)急迫の事情があるとき。
この規定によると、賃借人が大規模な修繕を行うことも可能になります。
しかし、賃貸人の多くは、賃借人が大規模な修繕を行うことに抵抗感があるでしょう。
対応策として、賃借人が修繕できる範囲や賃借人の通知の方法について特約を設けることができます。
例えば、「民法の規定に関わらず賃借人の修繕の範囲は次のいずれかに該当する小規模な修繕に限る」という特約を設けて、修繕の種類を具体的に列挙することが考えらます。

3賃借人の原状回復義務
賃借人が負う原状回復義務の範囲が明確になりました。
すなわち、賃借人は、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗(通常損耗)並びに賃借物の経年変化(経年劣化)を除いて、賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負います。
ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではありません。
この規定は任意規定なので、通常損耗についても賃借人の負担とする特約も可能です。
ただし、判例により「少なくとも、賃借人が、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明示されているか、賃貸借契約書で明らかでない場合は、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である。」とされています。