債権回収の基本

 高橋 英伸

2020年06月01日

<ポイント>
◆債権回収は他社に先んじて行う
◆担保の取得、実行、保全など債権回収の手段は様々ある

新型コロナウイルスの流行により、日本経済は後退局面に入ったと言われています。残念ながら、今後、倒産する企業が増えるであろうことは誰の目にも明らかです。
このような状況下では他社に先んじて債権回収を図っていくことが重要になってきます。仮に、何らの債権回収手段も講じないまま取引先が破産、民事再生等の法的整理手続に入った場合、一般的な債権者は平等に扱われることになります。各債権者は全く配当を受けられないか、額面の数パーセントの配当を受けるという結果に終わることがほとんどです。このような事態を避けるためには、他社に先駆けて一刻も早く、かつ、適法に債権を回収する必要があります。
回収を完了してもその後まもなく取引先が法的整理に入って回収した額を管財人に返さなければならない場合もありますが、他方で法的整理が回避される場合や、かなり後になって法的整理が取られて返還を免れる場合には他社と異なり自社は損失を免れる場合があるからです。

以下、債権回収の基本的方法を列挙します。詳細については弁護士にご相談下さい。

1 債権の確認・強化
  取引先の支払いが滞り始め売掛金などが溜まってきた場合は、覚書などにより残債の額を確認します。これにより債権の消滅時効が更新されます。また、債権の額を巡る争いを防ぐ効果もあります。
口頭やメールによる督促に対してのらりくらりかわしてくる取引先に対しては内容証明郵便等によってきちんと書面で請求して圧力を掛けるべきでしょう。請求手段が手ぬるければ放置される可能性が高くなります。
早期の一括弁済が困難ということであれば、一定期間の支払猶予や分割弁済を認める代わりに、人的担保(保証人)や物的担保(不動産の抵当権など)を取ることで債権を強化することを検討します。
2 保全手続の利用
  取引先が誠実に支払いをしない場合には、民事保全手続を利用して取引先の不動産、債権(銀行預金、売掛金など)を仮に差押えることができます。この保全は取引先に対して相当なプレッシャーとなることが多く、他社に先駆けて回収できる可能性が高まります。
3 担保等の実行
(1)動産売買先取特権
   取引先に物を売った代金が未回収の場合、取引先に残る商品や転売代金を差押えて取り立てることが可能です。
(2)相殺
   支払いが滞る先に対して自社が債務を負う場合、自社の売掛金と相殺することによって、売掛金を回収したのと同様の効果を得られます。
(3)商事留置権
   売掛金の支払いが滞っている場合、相手方から預かっている物を返さず、最終的には競売により回収することができます。
(4)所有権留保
   代金を完済するまで自社に所有権を留保する契約をしていた場合、売買の対象を取り戻すことができます。