会社法改正の論点 総会書類の電子提供

 森田 豪

2017年11月15日

<ポイント>
◆会社法改正により総会書類の電子提供制度が導入される見込み
◆現行法と異なり個々の株主の承諾は不要とされる
◆システム整備や株主の書面請求権など制度設計の詳細は現在も審議中

現在、法務省の法制審議会において会社法改正の検討が行われており、参考書類など株主総会書類の電子提供制度を新たに設けることが主要な検討事項の一つになっています。
現行法上も株主から個別に承諾を取りつけることで招集通知や参考書類をインターネット上で提供できますが、やはり株主から個々に承諾を得ることは難しく、現行法の制度はほとんど利用されていません。
これに対して改正による新制度では、個々の株主の承諾を必要とせずに参考書類など総会書類の多くをインターネット上で開示し、株主に対する印刷物での通知としては、総会の日時・場所や総会書類を見るためのウェブサイトのアドレスなど最低限の内容のみでよいという制度設計が想定されています。

法制審議会の審議経過をみると、詳しい制度内容については今も議論されているものの新たな電子提供制度を導入すること自体はほぼ既定路線になっているようです。また、株券電子化のときのように少なくとも上場会社については新制度を一律に導入するべきであるという意見が示されています。
総会書類の印刷、封入などの事務が簡素化されて投資家への情報提供が早くなり、特に機関投資家が議案を検討する時間を確保しやすくなることが新制度のメリットであるといわれています。

個人投資家からみるとどうなるでしょうか。
総会の日時などは知らせてもらえるものの、会社の業績や総会の議案などの詳しい情報を知りたければインターネットにアクセスしないといけません。株主総会の詳しい内容に関心はあるがインターネットを利用していないという株主にとって新制度は不都合です。
こうした不都合への対処として、株主が請求した場合には会社は印刷物で詳しい情報を知らせなければならない(書面請求権)という制度設計にすることが検討されています。
この書面請求権に関しては、処理するためのシステムをどうするのか、誰がそのコストを負担するのか、定款による書面請求権の排除を認めるか、などの議論が引きつづきなされています。

以下、私個人の意見です。
機関投資家の検討時間を確保するためであれば、証券取引所の要請により現在も行われている招集通知のインターネット上での開示を前倒しで行う、あるいは総会の開催日程(いわゆる集中日の問題)の柔軟化をすすめるといった他の対処方法もありうるところであり、新制度は必ずしも魅力的なものではありません。
少なくとも株主の書面請求権は強行法規的に保障されるべきであり、定款規程による排除を認めるべきではないと考えます。