会社の従業員に対する求償など

 高橋 英伸

2016年09月15日

<ポイント>
◆被害者に賠償した会社は加害行為をした従業員に求償できる
◆従業員が会社に損害を与えた場合、会社は従業員に損害賠償請求できる
◆ただし正常な事業活動上生じた事故に関して求償や賠償を求められる範囲は極めて限定的

自動車事故事案を扱っていてしばしば経験するのは、事故を起こした従業員が、勤務先の会社から、会社自体が被った損害や、会社が被害者に賠償した額について責任を取らされたという案件です。具体的には、修理費を給料から天引きされたというような事案です。中小の運送業者に多いという印象です。
 
確かに、会社が使用者として従業員の不法行為によって損害を受けた被害者に対し賠償をした場合、会社は従業員に求償できます(民法715条3項)。
また、従業員は会社と労働契約を締結しているため、従業員が会社に損害を与えれば従業員の会社に対する債務不履行を構成し、民法の一般的なルールにより会社に対する損害賠償義務を負います。

しかしこれらの場合、事業によるリスクは利益を得ている使用者が負うべきという報償責任の原則や、従業員の資力(事業活動上の損害を負担するほどの資力がない者が多い)を考慮して、裁判所は会社の請求を相当程度、制限するのが通常です(従業員の負担を2、3割に抑えるなど。)。そうすると、上記のような天引きはそのほとんどが違法なケースとなるでしょう。
そもそも過重労働が事故の原因ではないかという事案も少なからずあります。事故を契機に会社の暗部が一気に顕在化し、会社と取引先、会社と従業員の信頼関係がなくなって会社が危機に陥るという事態もありえます。会社としては安易に事業上の損害の責任を従業員に押し付けないこと、従業員としても全て自分の責任と考えないことが肝要です。