会社から不当に利益を得た取締役の各種責任

 高橋 英伸

2019年01月01日

<ポイント>
◆不正に利益を得た取締役に対しては厳正かつ多重構造の法的対処が待つ
◆とはいえ複雑な問題であるため事案解明・証拠収集は容易ではない

日産のカルロス・ゴーン元会長が会社から不当な報酬を得ていたとして、毎日のようにニュースになっています。株式会社の取締役が会社から不正に利益を得るなどした場合、どのような責任が待っているのかにつき、同種事案に関する経験を踏まえて簡単に説明します。

取締役は、法令・定款・株主総会の決議を守り会社のために忠実に職務を行わなければなりません。そして、任務を怠って、会社に損害を与えた取締役は、会社に対し損害賠償をしなければなりません。

会社法上、取締役が利益相反取引等を行う場合に取締役会の決議等を経る必要があります。そこで例えば、ゴーン会長が、取締役会の承認がないのに、自身が代表者を務める別会社の損失を日産に何らかの取引の名目で補填させていたということであれば、違法な利益相反取引等をしたことになり、会社の損害について損害賠償責任が発生します。当の本人以外にも、仮に利益相反取引を承認した他の取締役がいたのであれば、この取締役も損害賠償義務を負います。

また、金融商品取引法には、上場企業が経理の状況等を記した有価証券報告書を提出しなければならないことが記されています。虚偽記載によって株価が暴落した場合、株主の損害を賠償しなければなりません。

以上は民事上の賠償責任の話ですが、2018年12月現在で先行して話題になっているのはゴーン元会長の刑事責任です。

取締役は、自己若しくは第三者の利益を図る目的で、任務に背く行為をして当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処されます(特別背任罪)。そこで、例えば、ゴーン元会長が、自分の利益のために、違法な利益相反取引等によって会社が損害を被れば同罪が成立します。この背任罪は、刑法の定める「背任罪」より罰が重い「特別」な背任罪です。

また、単純に会社から金品を不正に領得した場合には刑法上の業務上横領罪が成立します(10年以下の懲役)。

そして、有価証券に虚偽の記載をした取締役は金融商品取引法違反となり、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金を課されます。なお、これは故意犯であり過失犯ではないため、誤ってではなく、わざと記載したということでなければ成立しません。

会社としては警察・検察に告訴等をして捜査してもらうことになりますが、経済事犯は殴った、金品を物理的に盗んだというような単純な犯罪ではないため、警察・検察が簡単に受理してくれません。自ら捜査機関になったつもりで相当な労力を用いて証拠の収集と事案の解明を進める必要があります。

最後に、取締役の放漫経営等によって会社が倒産に至った場合について。
この場合は破産法等により選任された管財人により、社長以下の取締役らが不当に利益を得ていないか、財産を隠匿していないか、経理を偽っていないかなどにつき徹底して調査されます。その結果、不正が判明した場合には、会社と共に倒産していない取締役らに対しても、管財人が否認権行使などによって、会社財産の回復が図られます。