企業内弁護士(インハウスローヤー)の活用

 高橋 英伸

2015年10月01日

<ポイント>
◆法的素養は単なる法学部卒よりも格段に上
◆外部弁護士との連携が容易になり、外部弁護士の仕事の管理もし易くなる
◆待遇は他の従業員と同等の場合が圧倒的に多い(高くない)

企業内弁護士(インハウスローヤー)が増えています。企業内弁護士とは、従業員として企業に勤務する弁護士です。組織内弁護士ともいいます。弁護士の数は年々増えており総数は3万6000人を超えましたが、企業内弁護士はさらに急速に増えており総数は1400人、全弁護士に占める割合は4%となり、総数、割合とも増加傾向が続くものと思われます。とはいえ絶対数が少ないこともあり、企業にとっては未だ一般的な存在とはいえないでしょう。そこで、以下では、外部の弁護士の視点から、企業内弁護士について説明したいと思います。

まず、企業内弁護士は企業内のどの部署に配置され、どのような業務をまかされることが多いのでしょうか。日弁連等の調査によれば、圧倒的に多いのが本社法務部であり、契約審査、訴訟管理、コンプライアンス、M&Aなどを任されることが多いようです。

もっとも、そのような業務には法学部卒業者を当てれば足りるようにも思います。しかし、法学部を卒業したのみの人材と弁護士資格を有する人材とでは決定的な違いがあります。
法律というものは条文や裁判例を知っているだけでは役に立ちません。普通の法学部で学ぶのはここまでです。実社会で法律を駆使するには、問題となる法律の条文や裁判例を要件に分解し、各要件を満たす事実はなにかを見出し、事実の立証に必要な証拠の評価をする能力が必要です。医学であれば、病気や治療法の知識を、実際に現場で生かす能力というところでしょうか。このようなスキルはロースクール以降で学ぶことです。特に、司法試験に合格した後に行く司法研修所や実務修習先ではこれらの能力を徹底的に教え込まれます。
このような能力の有無は事案に応じた契約書を作成したり、トラブルを解決する場面で明確な差をもたらすのではないかと思います。

企業内弁護士の存在は、外部の弁護士にとっては良し悪しです。良い面は、企業との連携が非常にスムーズになるということです。一人の弁護士が全ての分野に精通することは不可能ですから、少数の企業内弁護士が全ての分野に対応することも不可能です。そこで企業は分野ごとに外部の弁護士の協力を必要とします。
そして、外部の弁護士と企業が協働する場面で、企業内弁護士は外部弁護士と企業の橋渡しをしてくれます。外部弁護士のアドバイスを最も正確に理解してくれるのは企業内弁護士でしょうし、外部弁護士がどのような情報・資料を必要とするかを理解し、動いてくれるのも企業内弁護士でしょう。
他方、外部弁護士にとって悪いのは(企業にとっては良いのですが)、企業内弁護士がいるとサボれないということです。手を抜けば企業内弁護士にばれてしまいます。間違いも見抜かれてしまう可能性が高い。弁護士報酬も適正でなければ企業内弁護士に指摘されるでしょう。外部弁護士にとって、企業内弁護士がいるといないとでは緊張感が違います。

気になるコストですが、部門長未満の企業内弁護士については他の従業員と同等という企業が圧倒的に多いようです。弁護士を雇うとなれば高くつくのではというイメージを持たれるかもしれませんが実態は異なります。弁護士になるまでのコストや雇用した後に期待できる能力を思えば、企業にとってはかなりお得な買い物といえるでしょう。

企業内弁護士を雇うことについて、企業に大きなメリットがある一方、デメリットはないように思われます。積極的に雇用してみてはいかがでしょうか。