交通事故刑事弁護人費用保険

 高橋 英伸

2019年03月01日

<ポイント>
◆史上初の刑事弁護保険
◆対象は人身事故に限定
◆大阪では国選弁護から私選弁護への切り替えが原則禁止

2019年1月から、損害保険ジャパン日本興亜株式会社が、自動車事故の刑事事件の弁護士費用を補償する保険を販売しています。刑事弁護費用を対象とする保険は史上初であり、刑事弁護は国選か自腹で私選という長い歴史に変化をもたらす画期的なものです。
自動車を運転する者は誰しも加害者になってしまう可能性があります。2017年の人身事故発生件数は約32,000件ですから、一般市民にとって、一生の中で刑事事件の被疑者・被告人になる可能性が最も高いのは自動車事故が起きた時でしょう。この保険の潜在的な需要はかなりあると考えられます。他社も追随するのではないでしょうか。

ただし、保険の対象となる刑事事件は人身事故に限られていますので、単に著しいスピード違反で罰金になりそうな場合などは対象になりません。
また、全ての人身事故について法律相談料が対象となりますが、弁護人になってもらう場合の報酬については、死亡事故、逮捕された事故、公判請求された場合(略式起訴による罰金は対象外)に限られます。
重大な違反がなく、かつ、被害者が軽症の事故のように、警察に呼ばれて事情を聞かれるものの不起訴か罰金に止まる場合は、弁護士を付ける必要性が高いとまではいえないので対象外とし、死亡事故や逮捕された場合など、勾留の長期化や、正式な裁判の有罪判決によって、人生が大きく変わるおそれがある場合を対象としているのではないでしょうか。
また、故意による事故や酒を飲んでの事故(危険運転致死傷罪)など、通常の運転による事故とはいえない悪質なものも対象外とされています。

ところで、逮捕された場合、多くの場合、初期の段階で被疑者国選弁護人が選任されます。そして、大阪では、後に刑事弁護人費用保険があると分かっても、私選弁護士に切り替えることが大阪では原則できません。従来から、国選弁護人が報酬の多い私選弁護人への切り替えを誘導することは、国選弁護制度の公正さを疑わせるため、原則切替え禁止とされており、これが維持された形です。
しかし、特に逮捕・勾留された者にとって、弁護人に依頼することは憲法第34条で保障された権利ですから、私選弁護を補完する国選弁護制度のあり方以上に、逮捕等された者の私選弁護人選任権の方が重要とも考えられます。特に冤罪で逮捕された者(相手方が信号無視をしたのに、自身が信号無視をしたと疑われて逮捕された者など)にとっては、国が選任する弁護人よりも、自分で選んだ弁護人に依頼したいと思うのではないでしょうか。私選弁護人を選任する方法がないわけではありませんが、最初に面会に来た弁護士を私選弁護人にする選択肢がないことは、捕まった者にとって制約となります。
大阪のルールは、保険が適用される事件が増えてくれば問題になるかもしれません。