交通事故・交通違反の罰則強化について

 片井 輝夫

2002年07月15日

【危険運転致死傷罪】
従来、交通事故で人を死傷させたときは、刑法第211条の業務上過失致死傷罪として処罰されていました。
その刑は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
しかし、最近、飲酒や暴走行為などによる悪質な交通事故が多発し、事案によっては、刑が軽すぎるという批判が強くなり、平成13年12月施行の改正刑法で、従来の業務上過失致死傷罪とは別に危険運転致死傷罪が新設されました。
4輪以上の自動車を、飲酒又は薬物使用して運転したり、著しい高速、又は正常運転能力がなく運転したり、異常接近、信号無視など暴走族的な危険な運転をしたりしているときに事故を発生させると、傷害の場合でも10年以下の懲役に、死亡の場合は、1年以上の有期懲役(15年以下)になります。
本来、過失というのは、結果(死亡とか傷害)の発生が予見できるのに、これを回避する注意義務を怠ることをいいます。
故意というのは、死亡とか傷害という結果発生を意図的に起こす行為です。
過失犯と故意犯の違いは、結果発生を容認しているかという点にあるのですが、現実の事件では、その境界は、かならずしもはっきりしない場合があります。
例えば、スピード違反をして運転を続けると、人をはねてしまうかも知れないが、人をはねてもしかたがないと思いながら事故を起こしたような場合は、故意犯となります。
したがって、それは殺人罪や傷害罪、傷害致死罪として処罰されます。
人が死ぬかもしれないが、死んでもかまわないと思っている意思状態を、通常、「未必の故意」といいます。
警察に追われて、逃走中に人をはねるというような場合がこれにあたります。
ところが、スピード違反をしていても、普通の人なら事故を起こすかもしれないが、自分は、運転がうまいから絶対事故なんか起こさないと思いながら運転して、結果的に事故が発生した場合、それは、過失犯ということになります。
このように、事故形態は、ほとんど同じなのに、運転者の主観的な意思によって、大きく処罰が異なるわけです。
しかし、飲酒、スピード違反、無免許、暴走族的な運転行為は、極めて事故発生の可能性が高い行為ですから、運転がうまいから事故なんか起こさないと思っていたとしても、その悪質さは、故意犯とたいしてかわらないといえます。
そこで、このような悪質な危険運転での交通事故は、過失の程度が強いということで、罰則を強化することとしたのです。

【悪質運転者の違反行為の罰則強化】
平成14年6月施行の道路交通法では、悪質な交通違反についても罰則が強化されました。
従来は、3年以下の懲役又は25万円以下の罰金であった救護義務違反(いわゆるひき逃げ)は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に、2年以下の懲役又は10万円以下の罰金であった酒酔い運転、薬物使用での運転は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金であった酒気帯び運転は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に、6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金であった過労運転、無免許運転は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に引き上げられました。
また、従来、アルコール濃度呼気1㍑あたりの0.25ミリグラム以下は酒気帯びでしたが、これが、0.15ミリグラム以下に引き下げられました。
また、免許停止や免許取消などの行政処分についても、罰則が強化されています。