交通事故における逸失利益計算と民法改正

 喜田 純章

2019年07月15日

<ポイント>
◆逸失利益は後遺障害の等級に応じた労働能力喪失率により算定される
◆割引率は基本的には事故日における法定利率により計算される
◆改正民法が施行されれば割引率が下がり、請求可能額が増える見込み

1 交通事故における逸失利益
交通事故に遭ってしまいケガの影響で体の不調が残り、それ以上は元に戻らない(これを「症状固定」といいます)となればその症状が後遺障害となります。
後遺障害が残れば、その分日常の仕事や生活にも支障が生じることは当然で、相当な収入減に繋るかもしれません。
しかし、実際に収入が減少するとしても、その後遺障害により将来にわたり現実にどの程度収入が減るのか(その減少分が「逸失利益」)を現段階で正確に算定することは極めて困難です。どうしてもある程度の「フィクション」として将来の減少分を考えていかねばなりません。
具体的には、労災補償の実務のため通達(労働基準局長通牒昭和32年7月2日基発第551号)として発表された労働能力喪失率表が後遺障害の逸失利益算定で広く用いられており、後遺障害の等級により何%の労働能力が減少したかを認定することが確立しております(例:14級であれば5%、7級であれば56%など)。これを用いて、将来減収するであろう金額を算出します。

2 割引計算とは?
このように算定された逸失利益はあくまで将来減収するだろう額の総額であり、いわば「1年後にもらう100万円を今もらう」ことに近いものです。今もらえる100万円と、1年後にもらえる100万円では価値が違うというのは感覚的にもご理解いただけると思います。
このように将来もらえる金額を現在の価値に引き直したらいくらになるかという計算を「割引計算」といいます。具体的には、その金額を「1+法定利率」で割り算します。
1年後の100万円の例でいえば、現在の法定利率は5%なので100万÷1.05で約95.2万円となります。これを何十年分と行うのは計算が煩雑なので、一般的には5%を前提にしたライプニッツ係数を用います。

3 民法改正の影響は?
交通事故のような不法行為に関しては、その事故日の法定利率が割引計算に用いられます。
そして、現状は5%ですが、令和2年4月1日からは民法改正により、その率が3%になり、割引額がその分小さくなります。先ほどの1年後の100万円の例でいえば95.2万が97万円程度になり、請求できる賠償額が増加します。
つまり、改正民法が施行された日以降に事故に遭い後遺障害が残れば、施行日よりも前に事故に遭った場合と比べ、同じような後遺障害でも請求額が変わってきます。
このように、民法の改正においても、交通事故の賠償額に大きな影響が生じることになります。これにより、損害保険会社の支払額も増える可能性があり、今後保険料に関しても増額することもあるかもしれません。