不祥事予防のプリンシプルについて(その1)

 池田 佳史

2018年06月01日

<ポイント>
◆不祥事予防に向けた取り組みの開示の検討を
◆目標達成はコンプライアンス違反してでも実現させるものではないことを周知させるべき

日本取引所自主規制法人は、平成30年3月30日に「不祥事予防のプリンシプル」を公表しました(本稿では簡略化して「予防P」としますが一般的な略語ではないのでご留意ください)。すでに、平成28年2月24日に「不祥事対応のプリンシプル」を公表していますが(同様に「対応P」とします)、その予防版ということです。
対応Pが4種類の原則を列記しているだけなのに対して、予防Pは6種類の原則に加えて各原則の解説や不祥事につながった問題事例も記載されています。
また、対応Pが実際に不祥事を起こした会社を対象とするのに対して、予防Pはすべての会社を対象とするものです。
私見ですが、予防Pにおいては全ての会社に適用させる原則を一律または型にはめて示すことは適切ではないことから、対応Pに比べて抽象的な表現にならざるを得ず、そのため解説を加えて具体的な対応をイメージしやすいように配慮したものと思われます。
予防Pを読んだ会社役員等の方は、自社の状況を鑑みて対応する必要があると感じる事項があると思いますが、ここでは当職の視点でいくつかの事項をピックアップして2回に分けて取り上げます。

原則1の解説1-4では「自社の状況や取組みに関する情報を対外発信し、外部からの監視による規律付けを働かせることも効果的な取組みの一つとして考えられる」とされています。
このような情報発信は、説明責任を全うするというメリットと、社内ルールなどを明示することによる実態との乖離を検証、防止するというメリットがあると思われます。
これにしたがった情報開示を採用する会社も増加すると思われますので、情報開示の要否、内容等の検討を開始するべきだと思われます。

原則2の解説2-1では「実力とかけ離れた利益目標の設定や現場の実態を無視した品質基 準・納期等の設定は、コンプライアンス違反を誘発する」とされています。
昨今の不祥事では、経営トップが内部通報制度を整え、コンプライアンス重視を標ぼうしていながらも、目標とする業績達成のために適切な範囲を超えたプレッシャーを与えたことがその原因となったとみられるものが少なくありません。
上記はこのような実情と懸念を明確にしたものですが、本当にコンプライアンス重視の経営をするための具体的な方法は各社における創意工夫に任せられています。
私見ですが、目標とする業績を「最優先課題」とか「必達」とするなどの強い表現をする際には、コンプライアンス違反をしてでも達成を求めるものではないことも明示して周知させる方法が必要なのではないかと思われます。
また、解説2-2では「監査・監督機関の牽制機能には、平時の取組みはもちろんのこと、必要な場合に経営陣の適格性を判断する適切な選任・解任プロセスも含まれる」とされています。
コーポレートガバナンスコード改訂案の補充原則4-10①では、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会などを設置することにより適切な関与等を得るべき旨が述べられています。
上記の適切な選任・解任プロセスには任意の指名員会などの設置も念頭において検討する必要があります。