下請法違反の事例(減額の禁止)

 嶋津 裕介

2017年06月01日

<ポイント>
◆デイリーヤマザキの弁当等のPB商品をめぐる下請代金の減額事例
◆減額ではなく「経済上の利益提供要請」の禁止規定もある
◆公取委の勧告では、社内体制の整備など再発防止策が求められる

「デイリーヤマザキ」を運営する山崎製パンにおいて下請法違反(下請代金の減額の禁止)にあたる行為があったとして、公正取引委員会は5月10日、同社に対し、再発防止策を勧告しました。
公取委によると、違反事実の概要は次のとおりです。

山崎製パンはコンビニエンスストアの弁当、麺類等の製造を事業者10社に製造委託していました。
同社が企画して業者に製造委託しているので、デイリーヤマザキのプライベートブランド(PB=自主企画)の弁当等のようです(日経新聞5月11日付け朝刊)。
製造業者はいずれも資本金の額が3億円以下の法人事業者です。
山崎製パンの資本金は110億円なので、下請法の定める基準3億円を超えます。
したがって、これら製造業者は下請事業者に該当し、下請法が適用されます。
山崎製パンは2014年2月から2015年1月までの間、下請事業者の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、種々の明細で、下請代金から減額をしていました。総額で約4620万円になります。

その明細とは次のような目的で徴収した金銭とされています。
「ベンダー協賛金」(販売促進のための費用)、「箸・フォーク代」(弁当等の購入者に配布する箸等の費用)、「販売奨励金」等(自社の利益確保のため)、「登録写真代」(店舗に配信する新商品案内を作成する費用)、「販促協力金」(値引きセールを実施する際の原資)、オープン販促費(新規開店時の廃棄ロス費用の補填のため)。

下請法は、「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること」を禁止しており、山崎製パンによる減額は、これに該当すると判断しました。

なお、公取委もガイドライン(下請法に関する運用基準)において、ボリュームディスカウント等合理的理由に基づく「割戻金」が下請代金の減額に当たらない場合があるとしています。

「例えば、親事業者が一の下請事業者に対し、一定期間内に一定数量を超える発注をした場合に、当該下請事業者が親事業者に支払うこととなる割戻金であって、あらかじめ、当該割戻金の内容を取引条件とすることについて合意がなされ、その内容が書面化されており、当該書面における記載と発注書面に記載されている下請代金の額とをあわせて実際の下請代金の額とすることが合意されており、かつ、発注書面と割戻金の内容が記載されている書面との関連付けがなされている場合」です。

また、協賛金等の名目の金銭を下請代金から差し引くのではなく、合意の上で下請事業者から支払わせるという場合も、下請法違反(経済上の利益提供要請の禁止)にあたることがあります。
この場合、公取委の前記ガイドラインでは「製造委託等を受けた商品等の販売促進につながるなど下請事業者にとっても直接の利益となる場合もあり得る」としています。
すなわち、(親事業者が下請事業者に提供を求める)「『経済上の利益』が、その提供によって得ることとなる直接の利益の範囲内であるものとして、下請事業者の自由な意思により提供する場合には、『下請事業者の利益を不当に害』するものであるとはいえない。」としています。

「他方、親事業者と下請事業者との間で、負担額及びその算出根拠、使途、提供等の条件等について明確になっていない『経済上の利益』の提供等下請事業者の利益との関係が明らかでない場合、親事業者の決算対策等を理由とした協賛金等の要請等下請事業者の直接の利益とならない場合」は下請法違反(経済上の利益提供要請の禁止)に該当する、とされています。

公取委が山崎製パンに勧告した再発防止策の概要は次のとおりです。
(1) 公取委が認定した前記の行為が下請法に違反すること、今後、同法が禁止する減額をしないことを取締役会の決議で確認すること。
(2) 今後、同様の違反を行うことがないよう、発注担当者に対する下請法の研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講じること。
(3) 減額した金額を下請事業者に支払ったこと、(1)、(2)で採った措置について役員、従業員に周知徹底すること。
(4) 取引先事業者にも、(1)、(2)、(3)で採った措置について通知すること。
(5) (1)から(4)で採った措置について速やかに公取委に報告すること。

なお、本件は、中小企業庁が公取委に通告した案件です。中小企業庁が通告を発表した2017年4月14日、その株価が一時、前日比で2.4%下がったとのことです。