下請法違反の事例(減額の禁止)

 嶋津 裕介

2018年02月15日

<ポイント>
◆伊藤園が特別協力金を支払わせていた例が減額禁止に違反していた
◆協賛金が「経済上の利益提供の禁止」に違反する場合も
◆下請代金から差し引く等負担を求められるのは客観的合理性ある場合のみ

公正取引委員会は2月5日、株式会社伊藤園に対し、下請法違反(下請代金の減額の禁止)行為があったとして、再発防止策を勧告しました。

伊藤園の資本金の額は199億円であり、3億円を超えていますので、3億円以下の法人事業者に製造委託するときには親事業者とされ、下請法の適用を受けます。
伊藤園は緑茶等の製造を資本金3億円以下の事業者(下請事業者)に委託していました。
伊藤園は平成28年6月から平成29年5月までの間、「特別協力金」として2社に対し1億1880万円を支払わせていました。
この金額には振込手数料として負担させた額も含まれています。下請事業者の責に帰すべき事由がないにもかかわらずです。
特別協力金とは「自社商品の販売促進のために下請事業者に支払われた金銭」とされています。
下請事業者の責に帰すべき事由とは、注文と違う、瑕疵がある、納期遅れ等をいいます。

ここで特別協力金を支払わせたというのが、直ちに「減額」にあたるというのは、形式的に解釈すれば、違和感があります。
これまで勧告のあった減額禁止違反の例でも、「協賛金」等の名目の金員を下請代金の額から「差し引いていた」というのが大半です。
それらが「減額」にあたるのは理解しやすいです。公取の下請法の運用基準で違反例として挙げられるのも、「下請代金から一定額を差し引いて支払った」ものが多いです。

しかし、「販売奨励金」を支払わせていた(平成29年5月、山崎製パン株式会社に対する勧告)こと、あるいは「特別条件」を下請代金の額から「差し引き又は支払わせていた」(平成29年4月、株式会社久世に対する勧告)ことが減額禁止違反に当たるとされた例もあります。
要は、(下請)代金支払いに際して一定額を差し引くという場合に限らず、代金は約定の代金を支払ったうえで、別に「協賛金」等の金員を払わせるというのも、実質をみれば、減額に当たることがあるということでしょう。
そうでないと、下請代金から一定額を差し引くという形式さえ取らなければ、減額禁止に触れないということにもなってしまいます。

ただ、伊藤園の例でいう「特別協力金」が自社商品の販売促進のためであったことをみても、そのようなケースは、下請法4条2項3号に定める「経済上の利益提供の禁止」に当ると考えるのが自然な感じもします。
もともと同号は、下請代金の減額には当たらないが、下請事業者が親事業者から協賛金の支払いを求められて断りにくく、結果として減額に当たるのと同様の効果をもたらすとして、設けられた条文です。
(親事業者が)「自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させ」て、下請事業者を不当に害してはならない、と定められています。

親事業者として下請事業者に協賛金を負担させようとする動機は、次のようなことでしょう。
つまり、他社製品との競争のなか自社の売価をできるだけ安くしようとして、その原資をどうするかと考えたとき、下請事業者もその製品を継続して販売することの恩恵を受けているのだから、下請事業者に応分の負担をさせることはむしろ理にかなうのではないか、という発想です。
公取の運用基準でも、次のように書かれています。
親事業者が下請事業者に「経済上の利益」の提供を要請する場合には、当該「経済上の利益」を提供することが製造委託等を受けた物品等の販売促進につながるなど下請事業者にとっても直接の利益となる場合もあり得る。
「経済上の利益」が、その提供によって得ることとなる直接の利益の範囲内であるものとして、下請事業者の自由な意思により提供する場合には、「下請事業者の利益を不当に害」するものであるとはいえない。

ただ、「他方、親事業者と下請事業者との間で、負担額及びその算出根拠、使途、提供の条件等について明確になっていない「経済上の利益」の提供など下請事業者の利益との関係が明らかでない場合、親事業者の決算対策等を理由とした協賛金等の要請等下請事業者の直接の利益とならない場合は、法第4条第2項第3号に該当する。」とされています。協賛金等の提供と下請事業者の利益との関係が明らかでない限りは、それは下請法違反とされるということになります。

これが対等な企業間であれば、そのような要請をしたところで、受託側も自社の条件には合わないからと拒絶することができるので、契約自由の範囲内といえます。
しかし、下請法においては、定型的な優越的地位が背景にあるため、下請事業者側は、自社の利益に繋がらない場合でも応諾せざるを得ないこととなります。そのことを下請法という法律で規制しています。
だから、親事業者と下請事業者が合意をしているからといって、減額禁止や経済上の利益提供の禁止に違反しないということにはならない、ということになります。

今回の伊藤園の例で、減額禁止違反とされたのは、協賛金を別に支払わせてはいたものの、下請代金額に対する一定割合だったなど何らかの関連性が認められるような事例で、実質減額といえる実態があったのだと推測します。
ともあれ、自社の規格で商品の製造を委託しているような場合、その下請代金そのものの支払いとは別の名目で金額で差し引いたり、支払わせたりすることは客観的かつ合理的な理由のない限りできないと考えておくべきでしょう。
下請事業者側からすれば、不明確な減額や協賛金の支払いについては、下請法を理由にきちんと交渉して拒み、既にそのような慣行があれば、正して減額等の金額を返させるべきでしょう。