下請法違反の事例(減額の禁止)

 嶋津 裕介

2017年08月01日

<ポイント>
◆自動車部品の製造委託をめぐる下請代金の減額事例
◆コストダウンを要請し、下請代金から差し引いていた
◆一般的には、単に法律の不知ではないケースも想定される

公正取引委員会は、自動車部品の製造業者・寿屋フロンテ(本社東京都)に対し、下請法違反(下請代金の減額の禁止)行為があったとして、6月23日、再発防止策を勧告しました。

寿屋フロンテは自社が自動車メーカーから請負うフロアカーペット等の部材の製造を下請事業者に委託していました。
寿屋フロンテの資本金は3億円超、下請事業者(法人)の資本金は3億円以下であり、下請法が適用される関係にあります。

寿屋フロンテが、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者8社に対し、下請代金総額約1870万円の減額を行っていました。
その方法には二つの方法がありました。
一つは平成27年9月から平成28年8月までの間、「原低」という名目の金額を下請代金額から差し引いていました。
寿屋フロンテが下請事業者に対しコストダウンの要請を行い、下請代金から差し引いていた金銭のことを「原低」と呼んでいました。
もう一つは単価の引き下げ改定を行ったところ、単価引下げ合意日前の発注分についても引下げ後単価を遡って適用し、平成27年10月から平成28年7月までの間、従前の下請代金の額との差額を差し引いていました。

寿屋フロンテは、勧告を受ける前である平成29年2月15日に既に、減額した金額を下請業者に支払っているとのことです。
また、同社の各行為が下請法に違反していること、今後、同じ違反を繰り返さないことを、2月17日開催の取締役会で決議しているとのことです。
さらに、自社の発注担当者等に対し下請法の研修を、平成28年9月30日、平成29年2月9日及び同月14日から同月16日まで行い、以上のような措置を取ったことを、
平成29年2月17日に下請事業者に通知済みとのことです。

その上で公正取引委員会は、今後の社内体制整備のために必要な措置を講じることや、既に実施済みの措置を役員と従業員に周知徹底すること、またこれらについて公取委に報告することを勧告しました。

寿屋フロンテは公取委から勧告を受ける前に減額分を下請事業者に支払うなど一定の措置を取っているものの、違反行為を社名と共に公表され、更なる措置を取ることを勧告されています。
金額が大きいなどの点から勧告に相当する事案と判断されたように思います。

下請代金の減額の禁止は、親事業者と下請事業者との間で合意された金額を、事後的に減額することを禁止するものです。
今から代金を決めようという段階で、不当に著しく低い金額を定めてはならないという「買いたたき」とは異なります。
民法の一般理論では、一旦決まった金額であっても、両当事者の合意さえあれば、これを減額することも可能ということになりますが、
下請法では、下請事業者保護のため、下請事業者の責めに帰すべき事由のない減額を禁止しています。

企業が顧客から発注を受けた製造を下請事業者に発注する際、発注担当者とすれば(あるいはその上位者からすれば)、当然、下請法には留意しなければならないと考えるように思います。
ただ、自社と取引先との関係が、下請法の適用を受ける関係にあるのか、取引内容が下請の対象かどうか、という点で知識がなかった、ということは考えられます。
また、場合によっては、一方的でない限り、つまり取引先が了承していれば、違法にはならない、という誤解もあるのかもしれません。
つまり、知識がなかった、あるいは誤解があったという場合です。
しかし、一般的には、必ずしも「知らなかった」ケースばかりではないように思われます。つまり、違法性の意識がありつつも、自社の優越的な地位を利用して、取引先が文句を言いづらい立場にあることに乗じて、取引先に負担を負わせているという場合も大いに想定されます。発注担当者への現場任せ、あるいは現場への暗黙の圧力があるケースもあるのではないでしょうか。
企業においては、自社の取引形態が下請法の適用を受けるものかどうかを確認したうえで、取引のプロセスにおいて、不明確な名目などで減額がなされていないかチェックしていくことが必要でしょう。
社内における内部通報制度がよく機能し得る場面でもあると思います。