三角合併をめぐる状況

 池田 佳史

2007年02月01日

昨年(平成18年)12月12日に経団連から三角合併に関して要件の厳格化を求める提言がされました。昨年5月に施行された会社法のうちこの三角合併に関する部分の施行が1年間猶予されていましたが、いよいよその施行が秒読み段階に入ったことによるものです。

ところで、「三角合併」の定義は、会社法の教科書によれば、吸収合併に際して消滅会社の株主に対して存続会社の親会社やその関係会社の株式が交付されるものをいうとされています。ただし、新聞等によりますと、外国会社による日本企業取得の場面でこの用語がクローズアップされ、一般的に「三角合併」という用語を使う場合、合併だけでなく、株式交換も含まれているようです。
そのため、2種類の「三角合併」に区別することができます。たとえば、外国会社A社の日本における子会社X社と合併対象会社Y社とが合併し、Y社の株主にA社の株式を交付する場合が合併による「三角合併」です。
また、X社とY社が株式交換を行うにあたって、Y社の株主にA社の株式を交付する場合が株式交換による「三角合併」です。なお、吸収合併とはX社とY社が合併してX社だけが存続する場合(Y社は消滅会社といいます)、株式交換とはX社がY社の株式を100%取得して完全子会社にする場合を言います。
これらは、会社法749条1項2号ホ(合併)、768条1項2号ホ(株式交換)に規定されています。この二つの内容は殆ど同じであり、合併や株式交換にあたって、消滅会社や完全子会社になる会社の株主に、存続会社や完全親会社になる会社の株式等(新株予約権や社債を含みます)以外の財産を交付するときには、その内容、数、額、算定方法を定めることになっています。アメリカでは一般的な制度であり、会社の組織再編が簡易になることから会社法でも導入されましたが、産業界の反対等もあり、これらの規定については会社法附則4条により1年間施行が猶予されていました。

平成19年5月1日に、1年間の猶予期間が過ぎて、三角合併の規定が施行される予定となっています。しかし、三角合併は外国会社が現金の支払いという負担なく自ら発行する株式によって日本の会社を傘下におさめることのできる制度であることから、無制限の施行は弊害があるとして、経団連は冒頭の提言を行ったものです。

提言では、日本の株主が保有株式の代わりに受け取る対価が、日本の取引所に上場していない企業の株式である場合に、株主保護などの観点から要件を厳しくすることを求めています。
たとえば、合併や株式交換の決議は特別決議によることになっていますが、このような場合には特殊決議によることにすることです。特別決議による場合、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上とすることもできます)の出席があり、そのうちの議決権の3分の2以上の賛成で決議されます。これに対して特殊決議による場合には、議決権を行使することができる株主の半数(頭数)以上で、かつ、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の2以上の賛成が要求されています。
つまり、特殊決議が必要とされれば少数株主が結束することにより否決することが可能な場合があり少数株主が保護されるというわけです。
また、三角合併では、多数派株主である外国会社が経営陣を送り込んだ上で、合併や株式交換を決議することが多いことから、消滅会社や完全子会社になる会社の役員に対して対価に対する厳しい説明責任を課して、外国会社を牽制することも提言されています。