ライブドア事件は何故早く審理が進んでいるのか

 片井 輝夫

2006年10月01日

従来、重大な刑事事件や複雑な経済犯罪事件・贈収賄事件などで被告人が無罪を争っている場合、判決が言い渡されるまで何年もかかっていました。例えば、オウム事件の松本被告に対する刑事事件は、事件発生から第1審判決が出されるまでに約9年かかっています。過去には判決が確定するまでに20年以上かかったという事件も数件あります。これは、従来の刑事事件の審理では、証人尋問期日が月に1、2回というようなペースでしか入らなかったことや、事件の争点整理や審理計画など事前準備ができていないために審理が空転したことが原因といえます。もっと迅速に裁判をとの国民の批判も当然です。

一方で、国民も裁判に参加すべきであるという機運が高まり、平成21年から裁判員制度が導入されることになりました。しかし、従来の刑事裁判の審理方法のまま裁判員制度を導入すると、裁判員が場合によっては10年近くも拘束されるということになりかねません。これでは、裁判員の負担が大きすぎて裁判員制度も機能しなくなります。刑事裁判を迅速に行い、かつ裁判員の負担を軽減するために公判前整理手続制度が導入されることになりました。

公判前整理手続とは、刑事裁判が始まるまでに、その事件の争点を整理し、検察・弁護側双方からの証拠を整理し、あるいはその取調方法や公判期日の日程まで決めてしまう手続をいいます。この間に、検察・弁護側双方から提出予定証拠を開示したり、その証拠の提出を争うかどうかの意見を述べたり、証人の請求をしたり、相互に立証しようとする内容を主張しあったりします。そして、裁判所は、双方の言い分の食い違い点を明確にして、請求された証人のうち誰をどういう順番で調べて行くかを決めるのです。公判前整理手続で請求しなかった証拠を後で出したいと言っても原則として採用されなくなります。そして、公判前整理手続が終わって第1回公判期日が始まりますと、毎日のように証人尋問が実施され短期間のうちに審理は終結します。公判前整理手続は、裁判員による裁判による場合は必要的になります。この公判前整理手続は、裁判員制度実施に先駆けて昨年11月から施行されており、堀江被告人に対する証券取引法違反の事件でも適用されることになったのです。

堀江被告人は、本年2月13日に起訴され、その後、本年5月から10回公判前整理手続が行われました。そして、9月4日に第1回公判が開かれましたが、11月までの3ヶ月の間に26回の公判を集中して開くそうです。この調子でいくと来年早々には第1審判決が言い渡されることになりそうです。このように、裁判所は裁判員制度実施に向けた予行演習を始めているのです。