ボランティア活動と事故

 片井 輝夫

2003年05月01日

【はじめに】
週休2日制の導入などで、子供達の校外活動が活発化するとともに、国民のボランティア意識の向上に伴い、様々なボランティア活動が盛んになってきています。
少年野球やサッカーなどのスポーツクラブ、子供会、ボーイスカウト、ガールスカウトなどの野外活動を主体とする青少年教育活動、身体障害者や知的障害者などを対象とする屋外ボランティア活動などがその例です。
このように、ボランティア活動の中には、常に危険を内包する自然を対象とする活動や、スポーツのように活動そのものに一定の危険を含む活動も多く、事故の発生は、ある意味、不可避なものであるといえます。
ボランティア活動というのは、活動のための実費を徴収することはあっても、主催者はもちろん指導者・引率者も無償で奉仕をしているわけです。
したがって、これらの好意で尽力されている方々にとっては、ボランティア活動をしても、なんらの経済的な利得を得ることができないのに、一方で、事故発生のときに責任だけ負わされるとなると、安心してボランティア活動ができないという思いがあります。
これらの活動は、地域と密着している活動も多く、一旦事故が発生すると、地域の人間関係にもひびが入りかねず、ボランティア活動をされている方々の最も心配なことは、事故のことなのです。
このような場合に、ボランティア活動の主催者や指導者などにどのような法的責任が発生するのでしょうか?

【ボランティア活動における事故の責任】
身障者の歩行介護のボランティアについてですが、判例は、「ボランティアとしてであれ、障害者の歩行介護を引き受けた以上、右介護を行うに当たっては、善良な管理者としての注意義務を尽くさなければならず(民法644条)、ボランティアが無償の奉仕活動であるからといって、その故に直ちに責任が軽減されることはないというべきであるが、もとより、素人であるボランティアに対して医療専門家のような介護を期待することはできないこともいうまでもない。例えていうならば、歩行介護を行うボランティアには、障害者の身を案ずる身内の人間が行う程度の誠実さをもって通常人であれば尽くすべき注意義務を尽くすことが要求されているというべきである。」(平成10年7月28日 東京地裁判決)としています。
このように、ボランティアには、専門家のような高度の注意義務はないが、一般人としてつくす程度の注意義務は課せられているわけです。
もちろん、ボランティア活動といっても、判断能力のない年少者を対象とするキャンプ活動もあれば、一部の社会人山岳会のように、判断能力や技術もある人達が、より高度な登山技術を収得するために、指導を受けて、さらに困難な自然環境に立ち向かうことを活動の主眼とする団体もあります。
したがって、その対象となる人達の判断能力や身体的能力の程度によって、指導者や引率者の注意義務も異なってきます。
また、ボランティア活動中の事故には、被害者側にも過失があることが多く、この場合は、過失相殺といって、被害者側の過失分を差し引いて賠償額が決定されることになります。
裁判所は、ボランティア活動の場合は、被害者側の過失を大きく捉える傾向が強いといえます。これは、ボランティア活動中の事故について、ボランティアの賠償義務額を多く認めすぎると、かえって社会的に意義のあるボランティア活動を萎縮させてしまうという政策的判断がかなり働いていると思われます。

【ボランティア団体の対策】
ボランティア団体には、つぎのような対策が望まれます。
まず、ボランティア活動の安全マニュアルを作成して、指導者に周知させること、1人の指導者に計画や実施を委ねずに、集団で活動計画に無理や危険がないかをチェックする組織形態とすること、そして、その活動記録や議事録を残していくことなどが大切です。
多数の指導者が活動計画を協議して決定することは、それだけで、その活動計画が、対象者の能力に相応したものであると推定が働きます。
指導者や引率者の人員、役務分担、救護体制などに関する会議記録、ボランティア活動対象者の能力や行動特性などに関する記録を残しておけば、安全確保に関する議論の経過を、後日立証できることにもなります。
また、過去に大事には至らなかったが、危険な事態が発生したときなどは、その原因を究明して、改善の措置をとり、それも記録に残しておくことが大事です。こうすることで、事故の発生を可能な限り防止できますし、また、万一事故が発生したときにも、そのボランティア活動が、十分な安全対策をとったうえでの不可避的な事故であることが被害者や裁判所に理解してもらえることになります。
それでもなお、事故は起こりえますので、ボランティア活動には是非とも保険への加入をおすすめします。