シリーズ・不正への対応策1 

 高橋 英伸

2018年07月15日

<ポイント>
◆証拠によって判断する
◆落ち度があっても過大要求に屈しない

事業者が直面する不当なクレーム・詐欺などの不正に対していかに対応すべきかについてシリーズで解説します(あくまでも私個人の見解であることについてはご了解下さい。)。

個人向けの商品・サービスに関して、被害を偽装し又は被害を過大に主張して事業者から賠償金等を騙し取るケースは最も多く直面する問題の一つと考えられます。
いわゆるクレーマー事案などともいうこの手のトラブルについては、詐欺などの不正が疑われる事案であれば毅然と対応して要求に応じないことが基本と思われます。

もっとも、商品・サービスについて苦情を言う者の大半は善良な消費者ですから、冤罪を生めばたちまち噂が広がって事業者のイメージがダメージを受けてしまうおそれがあるので、疑わしいものを原則不正事案として扱うという運用は危険です。冤罪を生むくらいなら少々騙し取られた方がマシと思って対応した方がよいのではないでしょうか。他方、カモにされないように悪質で証拠が固い事案については刑事告訴も辞さない厳しい態度で臨む必要があるでしょう。

では、不正事案かそうでないかをどこで見分けるべきでしょうか。私は、(1)苦情を裏付ける証拠があるかどうか、(2)請求内容が社会通念や法令に合致するものかの2点で見分けるべきだと思います。

不正の有無を証拠で判断すべき理由は、その場の問題で収まらず裁判や監督官庁の調査などに至った場合でも、証拠によって判断していればその正当性が認められる可能性が高まるからです。他方、証拠に拠らず経験や勘に頼った判断をすると、問題が大きくなった時に、説明・証明ができずに行き詰るおそれが高まるでしょう。あえていえば、真実かどうかより、証拠に基づいて説明・証明ができるかどうかの方が大切ということです。

(2)証拠によれば苦情の内容が正当であるとしても、次に、請求内容が社会通念や法令に合致するものかを検討する必要があります。事業者側に落ち度があったからといって過剰請求に応じてしまうのであれば、落ち度がないのに要求に応じたことと大差のない弊害が生じるおそれがあるからです。
商品・サービスの欠陥・落ち度による顧客の損害は、顧客の財物や身体に損害が及ばない限りは、提供した商品・サービスの代金が限度です。得られると思った商品・サービスが得られなかっただけだからです。そこで基本的には代金の返還や欠陥のない商品・サービスの提供によって解決すればよいということになります。迷惑を掛けたことには誠意ある謝罪で応じ、謝罪では不足という場合でも社会通念上、礼儀作法の範疇と考えられる程度の金品等(菓子折り等)の提供にとどめるべきでしょう。
もし代金返還等よりも多くの補償を行って解決する場合は、合意書などを交わして解決内容について互いに口外しないようにしておく方がよいでしょう。