いわゆる株式の持ち合い解消方法について

 池田 佳史

2017年07月15日

<ポイント>
◆特定の株主から「市場」を通さずに自社株を取得するには株主総会の特別決議が必要
◆定款の定めがあれば取締役会決議で「市場」を通じて自社株取得が可能
◆時間外市場も会社法上の「市場」に該当するものとされ、特に異論はない

2010年3月31日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」(開示府令)が改正され、有価証券報告書(縮めて「有報」といいます)に貸借対照表上の「投資有価証券」にあたる株式のうち保有目的が「純投資」以外の株式(「政策保有株式」といいます)の情報を開示することが必要となりました。
これにより、2011年3月期の有報からすべての上場会社は、上位30銘柄の政策保有株式の社名、保有株式数、貸借対照表上の時価を記載しなければならなくなりました。また、政策保有株式の価格が保有する会社の資本金額の1%を超える銘柄も同様です。
さらに、コーポレートガバナンスコードの原則1-4では「上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである」としました。
これをうけて、政策保有株式については、必要最小限度とするとか、さらに踏み込んで中長期的には削減していくというような記載をコーポレートガバナンス報告書に記載する企業も多くみられます。
これらから政策保有株式の売却はある程度の頻度で行われ、会社の保有する政策保有株式は減少する傾向にあるといえると思います。

ある会社が他社株を政策保有株式として保有する場合、他社も同様に政策保有株式として保有することが多く、業務提携等の目的で会社どうしが互いに相手の発行する株式を持ち合うことになります(「株式の持ち合い」といい、この株式のことを「持ち合い株式」とか「持ち合い株」とかいいます)。
この株式の持ち合い状態を解消する、すなわち相互に政策保有株式を処分することは上記のとおりある程度の頻度で起ります。
その場合、株式の持ち合いをしている2社のどちらか一方からの申出または双方合意により持ち合い解消をすることは少なくなく、その場合には持ち合い株を自社株として取得したり、別の企業に保有してもらうというような手立てを講ずることも多いようです。
すなわち、長期間にわたって市場価格で売却するのではなく、短期間で一定の価格で売却をすることになります。

持ち合い株を自社で取得しようとする場合、特定の株主から「市場」を通さずに自社株を取得するには会社法160条及び161条により市場価格のある株式でも株主総会の特別決議が必要になります。
これを避けるためには、同165条により持ち合い株を「市場」で売却し、「市場」で自社株を取得するという方法があります。この場合、定款の定めがあれば取締役会決議で自社株取得が可能です。
会社法では「市場」の定義はありませんが、証券取引所において立会時間内で売却することが「市場」での売却にあたることは当然です。
しかし、自己株式取得には相場操縦とならないように有価証券取引等の規制に関する内閣府令による制限があり、一時に多数の自己株式を、証券取引所を通じて取得するためには買付日の前日に具体的な内容の公表等が必要になります。
また、証券取引所における立会時間内での売却は多数の株式放出により株価が急激に変動する可能性もあり、証券取引所の時間外市場で一定価格で自社株取得をするという方法もあります。
このような取引方法として東京証券取引所ではToSTNeT(Tokyo Stock Exchange Trading Network System)取引(たとえば自己株式立会外買付取引「ToSTNeT3」)があります。このような時間外市場も同165条の「市場」に該当するものとされ、特に異論はないようです。