あおり運転に関する妨害運転罪の創設

 高橋 英伸

2020年08月01日

<ポイント>
◆あおり運転に対する強力な罰則が設けられた
◆対象となるあおり運転は10種と多様
◆あおり運転防止のための社員教育の必要性あり

高速道路であおり運転をした車両が被害車両を停車させ、後続車が追突して被害車両の乗員が亡くなるという痛ましい事件などを受け、あおり運転を処罰するため、2020年6月10日に道路交通法が改正され同月30日から施行されています。

この改正により新たに3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることとなったあおり運転は次の10種類です。ただし、「他の車両等に道路における交通の危険を生じさせ
るおそれのある方法」であって、かつ、「他の車両等の通行を妨害する目的」で行う場合に限定されます。
1 通行区分違反(逆走など)、2 急ブレーキ禁止違反、3 車間距離不保持違反、4 進路変更禁止違反(割り込みなど)、5 追い越し違反、6 減光等義務違反(ハイビームによるあおりなど)、7 警音器使用制限違反、8 安全運転義務違反(幅寄せ)、9 最低速度違反(高速での低速度走行など)、10 高速自動車国道当駐停車違反。
上記のうち一部は自転車にも適用されます。
高速道路上で行い他の車両を停車させるなどした場合、罰則は重くなります。
また、あおり運転とされた場合は、違反点数が25点以上となり免許取り消しとなります。

この道交法改正に伴い自動車運転死傷処罰法も改正され、あおり運転が対象となりました。

他の車両等の通行を妨害する目的を有しているあおり運転が対象となりますので、たまたま幅寄せ状態になった場合などに摘発されるおそれは低いと考えられます。刑事事件において「目的」の立証は一般的に容易でないからです。しかし、あおり行為に該当する状況が反復されていればこの目的が推認されることになるのではないでしょうか。

この改正によりあおり行為に関する罰則は非常に強力となりました。免許取り消しとなれば、生活や業務において多大な支障を生じることになりえます。自動車を業務上必須とする職業人にとっては致命的です。
今回の改正で運転マナー全体が向上することを願ってやみませんが、他方で、えん罪の懸念があります。

進路の前後を撮影できるドライブレコーダーが増えていますので、例えば、道中急いでいて対象車両の後方に至近距離まで近づき、そこから、対象車両を左方か右方より追い越して対象車両の前に入れば、あおり運転かのような映像が撮影されることになります。このような行為の後に追突事故でも起きれば、追突した方はあおり運転をされたと主張する可能性があります。マナーに反していても他の車両等の通行を妨害する目的はなかったのに、あおり運転として立件されるおそれがなくはありません。

えん罪であろうがなかろうが、免許取り消し等の事態を防止するためには、あおり運転と受け取られないよう、従来よりも高度に運転マナーを遵守していく必要があります。
従来は、酒気帯び運転や著しい速度超過といった、常識的に遵守すべきルールを逸脱した場合にのみ免許取り消しというペナルティーが科されていたといってもよいかもしれませんが、今後は多様なあおり行為によって免許取り消しとされるリスクがあります。企業としては従業員に対しより運転マナーの徹底を指導していく必要があるでしょう。