「相談役」「顧問」の開示制度の創設について

 池田 佳史

2017年12月01日

<ポイント>
◆CG報告書に「相談役」「顧問」に関する記載が追加
◆「相談役」等が適正なガバナンスを阻害する懸念の指摘あり
◆「相談役」等の制度を有する会社は相当程度の開示が予想される

東京証券取引所は、2017年8月2日に「相談役・顧問等の開示に関する『コー ポレート・ガバナンスに関する報告書』記載要領の改訂について」)を公表しました。
これにより2018年1月1日以降に提出するコーポレート・ガバナンス報告書については新様式で提出できることになります。
新様式では、5部構成の第2部(Ⅱ「経営上の意思決定、執行及び監督にかかる経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況」の項に「(8)代表取締役社長等を退任した者の状況」が追加されています。
この改訂は経済産業省が策定したコーポレート・ガバナンス・システム・ガイドライン(CGSガイドライン)において、「社長・CEO 経験者を相談役・顧問として会社に置く場合には、自主的に、社長・CEO経験者で相談役・顧問に就任している者の人数、役割、処遇等について外部に情報発信することは意義がある。産業界がこうした取組を積極的に行うことが期待される。」をされたこと等をうけたものです。

相談役・顧問については会社法を含めた法律上の定義はなく、会社内でいかなる役割を担っているかについては通常は社外者にはわかりません。
また、就任にあたって、当該相談役・顧問が取締役でなければ会社に開示義務もなく、一般的には、代表取締役社長や(代表)取締役会長が退任する際に人事異動として相談役・顧問に就任したことが開示されるだけです。
取締役であれば当然に会社から報酬を得ていますし少なくとも取締役報酬の総額は開示されていますが、相談役・顧問については報酬があるのかどうかの開示義務を会社は負いませんし、先述した就任時に就任が開示されたとしても、その後に退任したのか、いつ退任したのかも開示する必要はありません。
一方で会社の経営陣に対して重大な影響力を有する場合もあって、企業経営に不透明な影響を及ぼし、適正なガバナンス機能を訴外している懸念があることも指摘されており(未来投資戦略2017)、このことが上記の開示に意義があるとの考えにつながったものです。

コーポレート・ガバナンス報告書による相談役・顧問に関する開示は強制的なものではなく、「記載する」を選択しないことも可能です。
開示を選択する場合、その対象は代表取締役社長等を退任した者であって現在役員でない者です。この「代表取締役社長等」には代表執行役社長が含まれることは当然ですがCEO(最高経営責任者)も含まれるとされています。
これらは会社のトップであった者という趣旨と思われますが、それ以外の役職、たとえば元社長ではない代表取締役会長や代表取締役COOはどうかという疑問はあります。いずれにしても、開示対象はある程度柔軟と理解できます。
また、必ずしも「相談役」「顧問」に限らず、その他の役職(たとえば「ファウンダー」などが考えられると思います)や会社と何らか関係のある地位にある場合も含まれており、肩書や名称は重要視されていません。
開示内容としては、それぞれ役職・地位、業務内容、勤務形態、条件(常勤・非常勤、報酬の有無及び任期が例示されています。
現在は「相談役」「顧問」等がいない場合、そもそも制度がない(廃止済みを含む)や制度はあるが現在は対象者がいないということ、任命に際しての取締役会等や指名・報酬委員会の関与の有無、報酬総額なども開示の例として挙げられています。

今回のコーポレート・ガバナンス報告書に記載内容の改訂による「相談役」「顧問」に関する開示は任意のものではありますが、「相談役」等の制度を有する会社は相当程度の割合で開示することが予想されます。
同制度を有する会社が有用性を認めて存続させる場合には、いかなる点について有用性があり、また会社に不利益を及ぼすのではないかという懸念を払しょくするよう具体的に説明するよう工夫が必要になると思います。