「働き方改革」の解説 その2 年次有給休暇を取得させる義務

 池野 由香里

2018年12月01日

<ポイント>
◆2019年4月1日より施行
◆年5日は取得させる義務・罰則あり
◆計画的付与制度の活用も

2019年4月1日から働き方改革関連法が順次施行されます。
前回は、時間外労働の上限規制について解説しました。
今回は、年次有給休暇を取得させる義務について解説します。

現在の法制度では、労働者が自ら申し出て年休を取得することになっています。
つまり有給休暇を取得するには、「〇月〇日に有給休暇を取得します。」と会社に申し出る必要があるのです。
しかし、実際には、職場への配慮やためらい等の理由からこの希望の申し出がしにくい場合がある、と言われていました。
現に我が国の年休取得率は49.4%にとどまっています。

そこで、今回の働き方改革の一内容として、労働基準法が改正され、すべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。
すなわち、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、使用者が取得時期を指定して与える義務があることになります。
ただし、本来は、労働者が自ら都合のよい日に取得するのが有給休暇制度の趣旨ですから、5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は不要です。
例えば、労働者が計画的付与と自主的な取得であわせて5日取得していれば、使用者が時季を指定する必要はありませんし、計画的付与で2日取得していれば、残り3日について時季指定すれば足ります。
もちろん使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなければなりません。
また、使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
なお、これに反して労働者に有給休暇を取得させなかった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

なお、法改正に対応するため、使用者としては、計画的付与制度を活用することも考えられます。
計画的付与制度とは、年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のことです。
計画付与制度を導入している企業においては、有給休の取得率が高くなっています。
そして、この制度を適切に利用することによって一人一人の労働者の有給休暇取得日数が5日に達しているか個々にウォッチする必要がなくなるというメリットがあります。

計画的付与にあたっては、(1)事業場全体の休業による一斉付与方式、(2)班・グループ別の交代制付与方式、(3)年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式などがあります。
(3)の場合は、夏季、年末年始、ゴールデンウィークのほか、誕生日や結婚記念日など従業員の個人的な記念日を優先的に充てるケースも多いようです。

ただし、本来、有給休暇は、労働者の希望によって取得するのが原則ではあるので、計画的付与制度を導入するには、(ア)計画的付与制度の導入について、就業規則に定めるとともに、(イ)従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。
協定で定める項目は、(a)計画的付与の対象者、(b)対象となる年次有給休暇の日数、(c)計画的付与の具体的な方法、(d)対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い、(e)計画的付与日の変更、です。

なお、例えば時間外労働に関するいわゆる36協定といわれる協定については、労使協定を労働基準監督署に届け出る必要がありますが、この有給休暇の計画的付与制度に関する協定については届け出の必要はありません。