「事業再生」 再破たんすれば失敗なのか?

 森田 豪

2011年02月15日

<ポイント>
◆事業再生中の企業が再度経営危機に陥る可能性は一般的には高い
◆事業再生により突然の事業停止を回避できること自体もメリット

経営が苦しくなった企業の建てなおしを図るために各種の対応策を講じることを「事業再生」といいます。弁護士も含め、事業再生を手がけていることをアピールポイントにしている専門家は少なくありません。最近の経済情勢下でニーズの多い分野です。

事業再生の手法としては、負債を返済していく負担を軽くするためにDES(デット・エクィティ・スワップ)やDDS(デット・デット・スワップ)を行う、民事再生手続を申し立てるといったことがありえます。また、企業のなかの優良部門と不良部門を会社分割で切り分け、優良部門を存続させて不良部門は清算するといった手法もあります。
事業再生のためにこれらの措置を講じた企業はその後どうなるでしょうか。

昨年(2010年)に公表された帝国データバンクの統計によれば、民事再生手続を経験した企業が再倒産する確率は、その他一般企業の倒産確率よりも10倍程度高いそうです。
民事再生では最長10年間までの支払期間で再生計画を作成します。
負債が大幅にカットされたとしても、再生会社にとって再生計画どおりに支払いを終えることは容易なことではありません。自社がどれだけ経営努力しても経済情勢の変化により収益が想定外に落ち込むかもしれません。資金繰りが苦しくなっても銀行はもはや融資してはくれません。
再生計画の期間内に再度行きづまるケースが多いのは確かです。

また、DESやDDSにしても、返済を一時棚上げにしているだけの側面があります。
DESやDDSで一時的に落ち着いた企業も、返済を棚上げにできる期間が終了すれば再度返済資金を確保する必要があります。
DESやDDSを実施する時点では将来どこまで財務状態を改善できるのかは予測の問題であり、不確定要素を伴います。
「やってみないとわからない」という部分があるのは否定できないでしょう。

一般論としては、事業再生中の企業がその途上で経営危機に陥る確率は通常よりも高いだろうといえます。
では、再度の経営危機がありうるとすれば、「事業再生」など無意味ということになるのでしょうか?

私自身としては、事業再生中の企業が再度経営危機に陥ったとしても、その一事をもって事業再生に向けた経営者の努力を無意味と評価すべきではないと考えています。

経営状態が悪化した企業が事業再生のための措置を講じなければ、行きつく先は破産、廃業です。多くのケースで従業員の失業、商品の供給停止といったトラブルが突然に発生することとなります。
従業員や取引関係者としては事前の準備ができないままに深刻な事態に直面させられます。

これに対して、事業再生により再建に向けたもうワンチャンスが企業に与えられれば、雇用の継続、取引の継続も可能になります。
最終的に再建がうまくいくかどうかは未知数ですが、仮に途半ばで破たんしたとしても、そのときまでに従業員や取引関係者はある程度の心備えをして準備することができます。
突発的な事業停止による混乱を回避できるだけでも社会的にメリットです。
突然の景気変動など経営者個人の努力を超える原因で企業が経営危機に陥った場合などは特に、経営者の心情としてもなんとかもう一回頑張りたいという気持ちが強いと思います。
社会の仕組みとしても、真剣に頑張る者にはチャンスが与えられるべきです。

債権者の支持が得られることが前提にはなりますが、再建に向けた機会が与えられること自体にも意味があるのではないかと思います。