「ステーキの提供システム」に関する知財高裁判決

 井上 彰

2018年11月01日

<ポイント>
◆「発明」と自然法則の利用

1 はじめに
今回は、「いきなりステーキ」で知られる㈱ペッパーフードサービスが出願した特許「ステーキの提供システム」(特許第5946491号。請求項の数6。)に関する知財高裁平成30年10月17日判決(特許取消決定取消請求事件)を紹介します。第三者からの異議申立てを受け一度は特許庁により取消決定が出されましたが、知財高裁判決で当該決定が取り消され特許として復活しました。文字数の制限がありますので以下では概要のみ記載します。

2 本件特許発明(特許第5946491号)
審理対象となった特許発明の請求項1は次のとおりです(以下「本件特許発明」。なお請求項2ないし6も審理対象となっていますが従属項であり省略しています)。分説は判決の記載に依拠しています。
A お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、
B 上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、
C 上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、
D 上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え、
E 上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと、
F 上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする、
G ステーキの提供システム。

3 特許庁の判断
本件特許発明「ステーキの提供システム」は、お客様を立食形式のテーブルに案内し、お客様が要望する量のステーキを提供するというステーキの提供方法を採用することにより、好みの量のステーキを、安価に提供するという飲食店における店舗運営方法、つまり経済活動それ自体に向けられたものであり、社会的な「仕組み」(社会システム)を特定しているものにすぎない、したがって、本件特許発明は特許法2条1項に規定する「発明」に該当しない、と判断した。

4 知財高裁の判断
本件特許発明は、ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでの人の手順(本件ステーキ提供方法)を要素として含むものの、これにとどまるものではない。札、計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(装置)からなる本件計量機等に係る構成を採用し、他のお客様の肉との混同が生じることを防止することにより、「お客様に好みの量のステーキを安価に提供する」という本件特許発明の課題を解決するものである。このように、特定の物品又は機器を、他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明の課題を解決するための技術的手段とするものであり、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するといえる。よって、発明に該当する。

5 コメント
「自然法則」とは一般的に、自然界において体験によって見出される科学的な法則をいいます。例えば、ゲームのルールや商売の方法、あるいはエネルギー保存の法則に反する永久機関などが発明から除外されます。今回の判決は特許における「自然法則の利用」の一事例として紹介しました。なお、自然法則を利用しているか否かの判断方法について、本件と同じく「特許請求の範囲の記載全体を考察すべき」とする裁判例として知財高裁平成20年(行ケ)第10001号同年8月26日判決(「音素索引多要素行列構造の英語と他言語の対訳辞書」事件)があります。