事務職員のエッセイ

2017年12月15日
ウズベキスタン・リターンズ 2

【サマルカンド停電編】
夕方4時にブハラを出てタクシーで4時間半、サマルカンドに向かう。
ブハラでは予約していた運転手とは別の運転手が迎えに来たので、てっきりサマルカンド在住で、ちょうどサマルカンドに戻りたがっている運転手に代わったのかと思ったが別にそうではなかった。
40$で引き受けたものの、やっぱりサマルカンドまで行くのが面倒になって若者に押し付けただけかもしれない。
若者運転手は大音量の音楽をかけ、とばす、とばす。音楽はかなり迷惑だが、運転手の大事な眠気覚ましだと思って我慢する。時々スピードオーバーのチャイムが鳴っているのが気になる。急いでくれるのはうれしいが・・・。

案の定、ねずみ取りにひっかかった。ほうら、言わんこっちゃない。
こんなところで捕まっていたら今までの時間短縮がパーになる。車から降りた運転手が、警官に罰金を支払っているのが見える。少しお金を握らせて見逃してもらえるほどウズベキスタン警察は腐敗していないようだ。
日本人に急かされたって言い訳しているのだろうか。いくら払ったんだろう。後で罰金分を上乗せして請求なんてしないでね。40$って約束だし、スピード違反なんて頼んでないんだから。
肩を落として戻ってきた運転手は、その後は、他の車と同程度のスピードで運転した。

ひたすら草原の中の一本道を進んで行くだけで特に変化のない4時間半。時折、羊や牛の群れにすれ違う。ごくまれにとても大きな群れの時もある。
タクシー内からいち早く群れを見つけ、カメラを持って待ち構え、すれ違いざまに群れをぴったり写真に収めるのは結構難しい。次こそはもっと大きな群れをど真ん中に。と写真のレベルアップに夢中になっていると意外と4時間半はすぐにたつ。
晩の7時を過ぎると夕日に変わってくる。そして日も落ちた8時過ぎにサマルカンドの町に入った。
サマルカンド在住でない運転手はホテルの位置までわからない。一緒に行った友人は、ここぞとばかりに旅行用に借りたWi-Fi を使ってスマホで位置情報を出すが分かってもらえない。観光名所のビビハニムモスクの真横なんだけどな。
結局私たちのタクシーは地元タクシーに誘導されながらタクシー2台でやっとビビカナムホテルに着いた。
特に上乗せ料金や誘導してくれた地元タクシーの料金を請求されることはなかったが、ちょっとだけ色を付けてあげた。運転手はこの後、来た道をブハラまで戻るという。安ホテルや誰か知り合いの所に泊まって、翌日ブハラに行く客を見つけることはしないようだ。

8時半、チェックインをする。
ホテルで、この近くにいいレストランがないか聞く。少し歩いたとこに値段も手頃でおすすめの店があるという。
“やっとごはん。”
と、その時、ホテル中の電気が落ち、辺り一面真っ暗になった。サマルカンドの町中、停電のようだ。
屋外にあるフロントとその周りには数人の人がいたが、誰もそんなに驚いていない。1週間くらいこのホテルに滞在している女性は、この間何回も停電に遭っているという。ある時は15分、あるときは1時間、またある時は1日中。長くて1日中のようだ。
そんな!
何が困るってカメラの充電ができないことだ。そもそも今回ウズベキスタンに来たのは、テレビでサマルカンドのシャーヒ・ズィンダ廟群を見て、13年前に来たときは全く違うほどきれいに修復されているのを知って、その美しい写真を撮りたかったからだ。それなのに充電ができないなんて。
でも、サマルカンドは2日間ある。最悪1日停電で写真が撮れなかったとしても2日めに朝から急げば全部回れる。結構ピンチなはずなのに、だんだん「何とかなるか。」という楽観的な気持ちになってくる。
今までも「もはやこれまでか。」と思うハプニングには何度かあっているが、そういう時ほど冷静に一番合理的に行動してしまう。パニックには陥らない方だ。結果、いつも上手くいき、今まで全てことなきを得てきている。(最悪、また来ればいいだけのことだし。)
ふと空を見上げると、町中の明かりが落ちて、星がとてもきれいだった。

さて、明かりがないことには部屋にも行けない。私がバッグからLEDの懐中電灯を取り出すとホテルの人が驚いた。
「日本は地震が多いから、みんなそうやっていつも懐中電灯を持ち歩いているのか!?」
いえいえ、別にそういう訳では・・・。先進国以外の国の夜の街灯は薄暗く、外で地図を見ようと街灯の下に行っても暗くてよく見えないことが多いので、いつしか懐中電灯は旅の必需品としてすぐ取り出せるバッグに入っているだけだ。
それよりも驚いたのはホテルのマネージャーの言葉。
町中停電だというのに、「レストランの場所を案内しますよ。さぁ行きましょう。きっと開いていますよ。」
開いてるって??町中停電でどうやってレストランを営業するのか。行っても真っ暗で料理を作れず営業は止まっていないのか?
停電なんて日常茶飯事で、案内してくれるおすすめレストランのこともよく知っているマネージャーが言うのだからきっと開いているのだろう。と後をついて歩く。
いったいどうやって暗闇の中、営業しているのかを確認するまでもなく、歩き出したらすぐに町の明かりがついた。停電時間は15分ほどだけだった。特に困ることもなく、結果としてむしろ面白い体験をしたくらいだ。

さてレストランはというと、「Kafe Bobur」という名前がついているが、決して日本のカフェ(コーヒーやサンドイッチがある)のようなものではなく、シャシリク(肉の串焼き)やサラダ、ナン(ウズベキスタンのパン)やチャイなどのポピュラーなウズベキスタン料理を出す普通の食堂だ。
調理している様子を見てわかった。
串焼きは串に刺した肉が既に冷蔵庫にならんでいる。それを炭火で焼くだけ。サラダは野菜を切って盛り付けるだけ。ナンもどこかで調達してきている出来あいのナンを半分に切ってカゴに入れるだけ。チャイは急須に入った日本茶のようなもの。
電気なんて使わないのだ。停電でもきっと開いているの意味がわかった。

今後、ウズベキスタンで停電に遭っても、「この間にごはんでも食べに行こか。」と余裕で言ってしまいそうだ。
そして、次からは2~3日の停電に耐えられるUSB充電器と大容量モバイルバッテリーも旅の必需品に加えようと強く思った。

イスラム建築マニア