執筆者:気まぐれシェフ
2007年12月15日

英語があまり得意ではない。

もともと子供時代から英語に限らず外国語には縁がなかった。
当然のことながら中学校・高校と英語を習ったが、教わる相手はバリバリの日本人教師だったし、人間よりもカエルの人口のほうが圧倒的多数を占めるような場所で育った私に外国人に触れる機会などあるはずもなく、間近で目撃したのは大学生になってからだった。そのときの衝撃と言ったら!黒船がやってきたときの村民くらい驚いたと言えばわかっていただけるだろうか。
海外旅行も大学の卒業旅行が初めてだった。外国人と言葉を交わしたのもこの時が初めてで、確かシャルルドゴール空港の入管のおじさんに何か尋ねられて答えた「いえーす」だったと思う。パリの交差点でぶつかりそうになった紳士に「Pardon, mademoiselle.」と言われたことが今でも忘れられない。マドモアゼルって私のことだよね?いやーんどうしよー。その人はただ単に「おっとごめんよ、お嬢ちゃん。」と言っただけなんだろうけど、なんだかお姫様になったような気がしてしばらく有頂天になったなあ。もう一度誰か言ってくれないかなあ。
まあそんなことはともかく、それ以降今までずっと、外国人と接するのは年に一度か二度の海外旅行のときだけで、しかも道を尋ねたり料理をオーダーする程度。英語くらいできるようにならなくちゃと思うものの、結局英会話教室にすら一度も通うことなくここまできてしまった。

それなのに、だ。
相手の言わんとすることがうっすらぼんやりだけどわかるのである。観光地で無謀にも参加する英語のガイドツアーだったり飛行機で隣の席の外国人に延々と聞かされる話だったり。もちろんスローペースで話してもらうのが条件だけど。なぜなんだろう。

考えられることその1。イヌやネコと話せるから?でもイヌネコ語と外国語は全然違うものだからありえない。
考えられることその2。子供のころ通っていたスパルタなピアノ教室で耳が鍛えられたから?うーんいまいち説得力に欠ける。
考えられることその3。アメリカのテレビドラマやハリウッド映画が大好きだから?しかも偉そうに吹き替え版じゃなくて字幕版を好むから?
おっ、きっとこれに違いない。

NHKで放送された「ビバリーヒルズ青春白書」にハマって以来アメリカのテレビドラマや映画を片っ端から見倒している。ゆっくりはっきりしゃべっているシーンなんて皆無に等しく、普段の彼らの会話はおそろしく早口だ。不勉強の私に聴き取れるはずはなく、大半は「レロレロレロ」と聴こえる。そのレロレロを聴き取り、同時に日本語字幕でその意味を確認しようと試みるときもあるが、そんなことをしたら肝心の映像が目に入らない。たまに字幕を英語表示に変えてみるが、あんな短い時間にこんな長い文章しゃべってるんか…と唖然とする。「24-Twenty Four-」なんて24時間ずっと緊迫しているから、まくし立てているシーン満載、つまりはずっとレロレロ言ってる。仕方ないので、一度目は日本語字幕に頼り、二度目以降はできるだけ英語字幕で見るようにしている。こんな方法でも長期にわたって視聴し続けた結果徐々に耳が慣れてきたということか。それならこのままこの勉強法を続ければいつかはレロレロ部分もわかるようになるかも。楽しくて英語も勉強できて一石二鳥なーりー。

いや、ひとつ欠点があった。
返事だ。
返事をしたいのに英語でなんて言えばいいのか出てこない。これははがゆい。かなりはがゆい。聴くばかりで、自分の頭で考えて話すという練習をしてこなかったからだ。
だから旅行先で怪訝がられることが多い。話を聞いている時は「Oh!」とか「Really?」とか言っちゃったりしてリアクションしているくせに話す番がくると急にモゴモゴしだす。なんだこの人?私の話わかってた訳じゃなかったの?と思われてしまう。それはいかん。断じていかん。
「うんうんえーとね、言ってることはわかってるんよ。でも英語でなんて言ったらいいんかなー、ああっわからへん。誰か助けてーー。」と無言よりはマシかと思いっきり日本語で話し、身振り手振りで、時には筆談や図解までして、このなんとか伝わってほしいという熱い情熱をぶつけるのだ!

大きなジェスチャーに豊かな表現、憶さない態度。
任しておいて。これは海外ドラマ見て鍛えてるもの。