執筆者:イスラム建築マニア
2005年01月17日

この年末年始に友人と3人でフリーでエジプトを旅行してきました。

1番、疲れたのはタクシーと買い物。
カイロ市内ならかなり乗っても10LE(エジプト・ポンド)≒180円で行ける。近ければ5LEらいだが、相手は50LEとふっかけてくる。「ガーリー、ガーリー(高い、高い)」と対抗するとあっという間に30、20と下る。そしてもうひと粘りすると15になる。
そこからは相手もなかなか下げようとしない。こちらも「近いのは知っている。じゃあ歩いて行く。」と歩き出すそぶりを見せる。すると「分かった、分かった、10LEでいいよ。」となる。そのとき、タクシー同士では「俺が見つけた客だ!」と毎回のように口げんかが始まっている。
買い物をするときも「How much?」と聞くと、まず10倍くらいにふっかけた値段を言ってくる。こちらは10分の1の値段で対抗する。このとき絶対に欲しそうなそぶりを見せてはいけない。しばらくするとどんどん値段は下がり、あっという間に半額以下になる。それでも最後は、「高いから要らない。」と店を離れるふりをする。すると、「分かった、分かった。」となり、結局10分の1くらいの値段で買えてしまう。
これがエジプトにいる間、毎日数回、吉本のおきまりのギャグのように繰り広げられる。最初の2~3回は面白いが、次第にこの一通りをするのが面倒くさくなって疲れてくる。

2番目に疲れたのはアラブ時間。
エジプシャンの時間感覚は驚くほどゆっくりしている。ホテルのロビーから部屋にスーツケースを運ばれるまでに、途中、何度も催促して1時間後。バスタオルがないので頼むと、「すぐ行く。」と言われてから何度も催促して1時間後。別のホテルでは翌日になったところもある。5ツ星のホテルでこれである。
航空券を買いに行っても空席があるかどうか確認すると言って1時間以上待たされる。国内線は2時間遅れ。(エジプトに行った人の話では、そのまま翌日まで飛ばなかったこともあるらしい。)すべてこんな調子である。
これは旅行に行く前からうすうす感じてはいた。インターネットで現地のホテルや寝台列車、クルーズの予約のメールを送っても全く返事が来ない。何度も何度も催促してやっと返事が返ってくるのが大体10日後くらいである。このときに、ちょっと怪しいなとは思っていたが、実際エジプトに行って、あまりにもの時間のいい加減さにびっくりした。

3番目に疲れたのはバクシーシ。
街中や観光地を歩いているとエジプシャンが親しげにやって来て「どこから?日本から?」などと声をかけてきて、解説や道案内をしてくれる。親切な人だと思っていると、「今、教えてあげたからお金をくれ。」と手を出してくるのでがっかりする。エジプトにいる間、いろいろなところで親切に教えてくれようとする人に出会ったが、必ず、お金を要求してくる。ルクソールの王家の谷では気球に乗ったが、降りるとき小さな村の上を通った。下では家中の人が出てきてみんなで手を振っている。子供たちは気球の後を追うように何十人も集まってついてきている。気球が珍しくて喜んでいるのか、歓迎してくれているのかと思って手を振り返していると、だんだん地上に近づくにつれ、みんなが「マネー、マネー」「バクシーシ、バクシーシ」と叫んでいるのがわかり、がっかりする。

4番目に疲れたのは同じような神殿の数々。
最初にアブシンベル神殿をみたときは、巨大な4体のラムセス2世像に感動した。
しかし、この後、ナイル川クルーズでアスワンからルクソールに着くまでに、イシス神殿、コム・オンボ神殿、ホルス神殿、クヌム神殿、カルナック神殿、ルクソール神殿と、次々と同じような神殿が出てくる。どれも今は柱と一部の壁や天井が残っているだけで、同じような壁画とヒエログリフが書かれている。「あれ?これ、見たで。」と思い、後になるにつれ写真の数も減ってくる。

5番目に疲れたのはナイルクルーズのビュッフェ。
アスワンからルクソールまで3泊4日のナイルクルーズを入れた。ちょっと奮発して5ツ星デラックスのクルーズ船にした。確かに豪華であった。エジプトの中で唯一職員がテキパキとしていてルームサービスも満点だった。
が、食事は基本的にすべてビュッフェである。洋食、エジプト料理と取り揃えてあり、毎回、少しずつメインもスープもデザートも変えてあるが、所詮ビュッフェである。朝、昼、晩と全9食もある。3食目くらいから、ビュッフェのならんだ料理を見るだけでおなかいっぱいになって食欲がなくなった。
ある日の朝食に珍しくご飯があった。が、特におかずになりそうなものがなく、がっかりしていると、同じく乗客の香港人の陳さんは、オムレツ焼き職人のフライパンを取り上げ、オムレツの具のハム、玉ねぎ、トマト、ピ-マンと卵とそのご飯で見事にチャーハンを作り、香港人テーブルは盛り上がっていた。「さすが、香港!」妙に感動した。「明日の朝は、私たちの分も作ってね。」と約束をしたが、その日の夕方船内で食中毒が発生して、結局、チャーハンは食べれなかった。

6番目に疲れたは早朝の観光。
アブシンベル観光はアスワンを拠点に日帰り観光するのが一般的である。私たちもアスワンで日帰り観光を申し込んだのだが、ホテルのピックアップ時間が午前3時半。これは、ツアーの観光バスであれ、路線バスであれ同じである。安全のためそれぞれの車にはツーリストポリスが一人乗り、アブシンベル行きのすべての車は一斉に隊をなして4時頃にアスワンを出発する。そしてお昼の1時頃に戻ってきて解散である。
また、ある日のナイルクルーズの観光は午前6時朝食、7時観光出発となっていた。そうなると5時起きである。
その日の観光は1箇所だけで、午前9時頃には観光を終え、後の予定はランチとアフタヌーンティーだけであった。こんなにゆったり時間があり余っているのに、何故か睡眠不足にさせられていた。

と、いろいろ書いたが、文句を言いながらも楽しかったのである。
ピラミッドやスフィンクスには感動したし、ファルーカ(帆かけ舟)でナイル川をのんびり遊覧するのも楽しかった。クルーズ船では他の国の人たちとも仲良くなった。紅海ではダイビングもした。砂漠に入ってオアシスの村で泊ったりもした。特に、きのこのような奇岩の林立する白砂漠は幻想的で美しかった。
そしてこの疲れた出来事こそ、エジプトらしくとても楽しかったと思っている。