執筆者:昭和芸能デスク
2008年02月15日

今年に入って雨や雪の降る日が多く、日常生活に支障をきたすことも往々にしてあり、そうした天候不順は厄介なものですが、場合によってはロマンティックな気分に浸れる側面もあります。

韓国では、にわか雨や通り雨にとりわけロマンティックな感傷を抱く傾向にあるようで、児童文学として広く親しまれている小説『ソナギ(直訳:通り雨)』はその代表的な例で、主人公の幼い少年期の思い出として淡い初恋の場面で通り雨が登場します。
そのほか日本で公開になり話題になった『猟奇的な彼女』(2001年)など多くの有名な映画やドラマの場面に印象的に登場するので、韓流映画・ドラマファンなら思い当たるところが多いはずです。
概ね思いを寄せる二人が雨のおかげで打ち解けあったりするものですが、映画など文芸作品に雨が効果的に使われることは東西を問わずよく見られるので、万国共通の観念と言えるでしょうか。

また雪も、雨と同じく叙情的な趣がありますが、日本で十数年前に公開になった映画『Love Letter』(1995年)は数年遅れで韓国でも公開され、若者の間で大変な人気です。
韓国内で日本映画の一般公開が認められるようになって日が浅いということもあるとは思いますが、日本映画で知っているものといってこの映画を一番に挙げる人が多く、日本語を話せない人まで『お元気ですかー』と雪の中主人公がクライマックスで叫ぶセリフを知っているほどでした。
そうした事情を全く知らずに留学したので、当初は大変驚きましたが、北海道が舞台のこの映画は、雪景色など映像自体が繊細で透明感のあるノスタルジックな作品なので、やはりロマンティストな韓国人にぴったりはまったのでしょう。

この韓国人のロマンティシズムはそう意外なことでもなく、それは記念日好きなところにも表われています。
例えば若者の間では、男女が付き合い始めて100日目に互いにお祝いをするというのが定着していますし、♪雨の水曜日にはバラの花束を贈る~という歌謡曲が流行した当時、水曜日は街でバラの花束を持った男性であふれたとか…。

また先ごろまで日本でも賑わっていたバレンタインデーですが、韓国でも同様に盛んで、しかも日本に比べてラッピングがとても華やかなのです。
日本ではこのところ、ベルギーやフランスからの直輸入を謳ったものや有名パティシエの高級チョコレートが注目の的で、どちらかというと落ち着いた高級感漂う包装が好まれているように感じます。
一方、韓国ではふわふわのリボンや花がたくさんついて大きなかごに入ったものやラッピングの包装も色とりどりのピンクで装飾されたものなど派手なものが目を引きます。
高級チョコレートももちろんありますが、主流はまだまだかわいい系といったところです。
この季節になると、若い女子学生が集まるショップでは、所狭しと華やかな包装の商品が並べられ、かごの商品に至っては天井にまで吊るされるほどで、その大きな包みを堂々と持ち歩く姿を街でよく見かけます。

そんなロマンティックな韓国人ですが、そうした記念日好きが高じて面白い記念日もあります。
3月14日のホワイトデーに続き、4月14日にブラックデーという日が若者の間で定着しています。
ブラックデーとは、2月のバレンタインデーと3月のホワイトデーにそれぞれチョコを渡せなかった人やもらえなかった人たちが黒いジャジャン麺を食べる日です。
ジャジャン麺は、日本で見られる中華の辛いジャージャー麺とは少し異なり、黒みそベースの甘みの強いタレのかかった麺で、主に中華料理屋さんで食べられるポピュラーな食べ物です。
食べる方もなんとなくハニカミながら食べる光景は、ロマンティックとはいい難いですがなかなか面白い趣向だと思います。
日本では自分用のチョコレートが売れていて、バレンタインチョコレートの売上げの一部になっているそうですが、かくいう私もロマンティックとは程遠く、自分のためにおいしそうなチョコレートを買い求めました。
4月14日にはジャジャン麺を食べた方がよさそうかなあと思っています。