事務職員のエッセイ

2017年07月15日
懐かしの眉山

4月上旬のある日、久しぶりに故郷の徳島に車で帰りました。
鳴門淡路自動車道の鳴門インターを下りてしばらく走ると、遠く右前方に“眉山(びざん)”が見えてきます。
万葉集にも詠まれ、どの方向から見ても眉の形に見えることからその名がついたと言われています。

この季節に車で帰るのは初めてでした。
眉山一帯が淡いピンク色に染まっているのには感激しました。
これほど桜の木があったとはこの歳になるまで気づきませんでした。
生まれた時から眉山の麓で育ちましたが、桜の季節に遠くから眺めることはなかったのです。

♪南の空に爽やかに緑のまゆやま仰ぎ見る~♪ 母校の小学校歌です。
標高290メートル。あべのハルカスより低い山ですが、子どもの頃は兄たちとよく遊びました
徳島には“遊山箱(ゆさんばこ)”という伝統文化である子ども用の木製の弁当箱があります。
それに母手作りの巻きずしやういろなどを詰め、家族でお花見をしたことが懐かしく思い出されます。
遊山箱とは、塗りの箱にお雛様や桜の花の絵が描かれ、提げられるように取っ手が付き、中に3段の重箱が入ったものです。
昭和40年頃までは、桃の節句やお花見など四季折々の行事に子ども用弁当箱として使われていましたが、
その後プラスチック製のものに変わり廃れていったようです。
しかし、昔ながらの工芸品を大切にしようとまた復活しつつあるようです。

もうひとつの思い出は、“錦竜水(きんりょうすい)”です。
眉山周辺には数多くの湧き水があり、そのひとつに錦竜水があります。
山の麓に無料の水汲み場があり、近くに住んでいた祖父に錦竜水でお茶を点ててくれとよく言われたものでした。
また、その近くに湧き水を使用して作られた“滝の焼餅”というとてもおいしい和菓子屋さんがあります。
その昔、蜂須賀公が国主として築城したときお祝いとして献上されたお菓子とのこと。
それはこし餡をくるんだ団子を菊紋の押し型で小判型に薄くのばしたものを香ばしく焼いたものです。
小さい頃から祖母に連れて行ってもらい、店内で美味しい阿波番茶と一緒にいただきました。
菓子名の通りお店の裏山には滝が流れ、池にはアヒルと鯉がたくさん泳いでいたのを覚えています。
かつては水量豊富な滝でしたが、今はそれほどでもないそうです。

今回は徳島駅周辺で用事がありましたので久しぶりに駅ビルに立ち寄ることにしました。
何十年ぶりでしょうか。
いつの間にかビルは新しくなってホテルができていたり、お店もガラッと変わっていました。
昔は地下階などなかったので、興味津々でエスカレーターを下りました。
地下では観光客用に徳島の名産がいろいろ売られていました。
そこにはなんと“滝の焼餅”の出店もありました。
早速その場で焼いてくれる焼餅と錦竜水で淹れてくれるホットコーヒーをいただきました。
懐かしい味でした。

日帰りの帰省でしたので暗くなる前に帰らなくては・・・。
吉野川を渡ったところでもう一度振り返り眉山にさよならをしました。
一抹の寂しさを覚えながら徳島を後にしたのでした。

カルメン