事務職員のエッセイ

2018年01月15日
モチベーション

大人になったら大好きなケーキをホールごと買って食べてやろう。はじめ人間ギャートルズに出てくる大きなお肉にかぶりついてやろう。テレビや漫画を夜中まで好きなだけみてやろう。と思っていた。

ところが現状はというと、大人になり過ぎて、ケーキは相変わらず大好きだけれど甘ったるくて1ピース食べるのがやっとだし、お肉も霜降りの高級なものは胸やけがする。テレビも漫画もさして興味が湧かない。仕事も勤続年数が長くなり入社当初に比べると緊張感が薄れてきている。
なんだか肉体的にも精神的にも老いてしまったようで、ここ最近ちょっと悶々としていた。

ちょうどそんな頃、突然に職務内容がガラリと変わることになった。
こんなダラけた私にやれるのだろうか、今さらこの歳で新しいことを覚えることができるのだろうか、不安しかなかった。
「おそらくバカになっているのでお請けできません」と断ることもできず、また悶々のタネがごっそり増えてしまった。やばいよなーこの先どうなるんだろうなー。

友人に話すと、頭のトレーニングも兼ねて資格を取ることを勧められた。その人はとても忙しい職業なのにいつも何か勉強している偉いである。こんな錆びついた頭で受験なんてできるんだろうか。学生時代以来勉強らしい勉強をしたことがない。
おススメされた資格の申し込み期限がぎりぎりだったので悩む時間も無く、とりあえず申し込みだけを済ませみた。
その時点で、試験日まで3か月。

新しい業務を覚えるのに忙しいことを言い訳に参考書を買うことすらせず、そのまま2週間が経過した。
いくらなんでも参考書くらいは買ってみるか、と重い腰を上げて書店で参考書をペラペラとめくってみたところ、到底数か月で理解できるとは思えない内容だった。
あかん、やってもうた。タイムマシン欲しい。2週間前の私に申し込むなと言いたい。
すっぱりあきらめて参考書すら買わないか、ダメもとで悪あがきしてみるか。書店内をウロウロしながら考えた。不審者と思われるくらいに店内をウロついて出した結論は「悪あがき」だった。理由は、すでに払ってしまった受験料が勿体ないから、である。

そこからは、いかに効率よく安く勉強するかの調査に2週間費やした。
吟味に吟味を重ねた参考書を1冊だけ買い、書きやすいペンとノートを探し、独学合格者のブログを読みあさり、いくつかの無料講座の動画の中から自分と相性の良さそうな先生の講座を見つけ出した。

準備は整った。試験まであと2か月。
いざ勉強を始めてみるとまったくもって時間が足りない。こんな資格なんかちょっと頑張れば楽勝じゃないの、と実は甘くみていた。甘くみていたうえに、自分の年齢を加味することをすっかり忘れていた。学生時代なら数回読めば覚えられたであろうことが、笑ってしまうほど記憶に残らないのだ。読んでも覚えられないので、やむなく声に出し書いて覚える戦法に変更した。参考書をひたすらブツブツと読み上げ、自分なりにノートにまとめ直していく。学生時代につちかった必殺ワザである。
平日は仕事でパワーを奪われ余力がないので、土日にまとめてやることにした。大好きな海外ドラマも観れず、音楽も聴けず、遊びの誘いも半分は断り(半分は誘いにのったけど)、まさに受験生のような生活だった。
これまでノホホンとした暮らしに慣れ親しんでいた体にはかなりこたえる。つらい、つらすぎる。二度とこの資格は勉強したくない、とすれば今回一発で受かるしかない。試験が済んだら思いっきり眠って、思いっきりだらだらと寝そべってドラマを観よう。それだけを思って過ごした2か月だった。

結果、無事合格。
資格を取れたことはもちろん嬉しいが、まだ勉強できる記憶力、忍耐力、計画力が残っているとわかったことで自信がついた。脂たっぷりのお肉は受けつけなくても脳はまだ若い!おかげでなんだか元気が出て、溜まっていた悶々からも解放された。

そして一番の自慢は、最低限の出費で済ませられたこと。
一度の受験料とたった一冊の参考書だけで済んだのだ。無料動画を提供してくださっている先生、無料で過去問の解説を公開してくださっている先生に感謝である。
友人達には、試験に受かって開口一番、安あがりを自慢するなんて、と笑われた。確かに今回の勉強のモチベーションはいつの間にやら「賢くなりたい」から「勿体ない」に変わっていた。私の場合、「勿体ない」はすごいパワーを引き出すようである。この法則でいけばもう少し難しい資格も狙えるかもしれない。いい発見をした。何ごともやってみるものである。

気まぐれシェフ