事務職員のエッセイ

2016年12月15日
ハとハナとピコ太郎と。

何年もやりたいと思っていたのになかなかできなかったことを、ついにこの夏始めた。
歯のホワイトニングとスポーツジムへの入会である。
どちらも決して安くはない。根っからの関西人としては、しっかり効果をあげてがっちり元をとろうと固く決心した。

まず歯のホワイトニングであるが、これは自宅で6週間毎日、その合間に歯医者さんで2週間ごとに3回、ホワイトニングをしなければいけない。薬剤を塗ったマウスピースを数時間はめるのでその間は飲食不可能。やってみるとかなり大変な作業だったが、最大の成果をあげようと頑張っただけあって、歯医者さんにも褒められるほど白くなった。
しかし毎日の食事でまた徐々に着色していってしまうとのこと。せっかくかけたお金と時間を無駄にはできないのでその後も定期的に自宅でホワイトニングをやっている。さらには、せっかく白くした歯が虫歯になって削られてしまうのは勿体ないという思いから毎食後の念入りな歯の手入れが欠かせなくなり、お昼休みも早めに休憩を切り上げせっせと歯の手入れにいそしむ毎日である。

スポーツジムのほうは、24時間年中無休の、筋トレとランニングのマシンしかない大変ストイックなジムに入会した。
ヨガスタジオもプールも無いので当然開催されるプログラムもなく、逆に、時間を気にせず好きな時間に行ける。ばっちりメイクとおしゃれなウェアで出会いを求めに来るめんどくさい女子も、友達同士遊び感覚でやってくる人も皆無。みんな一人でやってきて、黙々と鍛えて、そして静かに去っていく。いいジムを見つけた。
最初の1ヶ月は週3回通い、がっちり元をとった。よしよし、この調子で2ヶ月目も元取るでーと意気込んでいたある日、右側の肋骨に打撲したような鈍い痛みが。そして数日後には少し動くだけでも激痛が走るようになってしまった。息もできないし寝返りもうてない。2~3ヶ月前から続いていた咳による疲労骨折だった。
結局1ヶ月まったくジムに行けずじまいだった。そしてようやく痛みがおさまってきたと思ったら、今度は左側の肋骨に激痛が。最近調べた骨密度は20代なのにどういうこと?これ以上無駄にジムに料金を払い続けるわけにはいかない。咳を何としても止めなければ!
耳鼻科に行くと、鼻炎からくる咳との診断だった。もらった薬がよく効いたが、薬が切れるとまた咳がでる。このままではまたしても肋骨がやられていつまでたってもジムに行けないことになる。根本から治す方法はないものか。いろいろ調べていると、鼻をすっきりさせるという鼻うがいがおすすめらしい。要するに鼻から水をいれて鼻腔についた花粉や汚れを洗い落とすのだ。プールでツーンとなるあれである。ああ恐ろしい。恐ろしいがやるしかない。すべてはジムの元を取るため。関西人魂見せたろうやないの。
薬局に行くと鼻うがい用の生理食塩水キットが売られていた。「ツーンとならない」と書かれたそのうたい文句を今は信じるしかない。ネット検索で得た極意「大仏様のようにうっすら半目で下を眺め、全身脱力しつつ水を通す」を心で復唱しながら鼻うがいを実践する日々が続いた。努力のかいあって咳はおさまり肋骨も無事にくっつき、2ヶ月ぶりにめでたくジム通い再開となったのである。

長引く咳と激しく痛む肋骨、ジムにも通えずやきもきした日々を過ごしているとき、シフォンの長袖ブラウスを購入した。ドレッシーにもカジュアルにも使えそうで久しぶりにテンションがあがる買い物だった。まだ少し暑い時期だったのでもう少し涼しくなったら着ようと大事にしまっておいた。ところが今年はいつまでも暑い日が続きなかなか袖を通す機会がない。ようやっと秋風が吹きだした10月末。ついに着ちゃう?ボトムスは何を合わせようかしらなんて考えているとき、どえらいもんが現れた。
まじですか、あんたそれいやがらせですか、なぜその柄をチョイスしたのですか!
YouTubeでくねくねと歌い踊るのは、流星のごとく現れたピコ太郎。私のお気に入りのブラウスと同じ、ヒョウ柄を身にまとったピコ太郎。
ピコ太郎のパフォーマンスを目にしてしまった今、どんなにおしゃれなボトムスを合わせようが、このブラウスを身にまとった私は、誰の目にももはや彼の物まねをするお調子者としか映らないだろう。無理だ。元を取るために鼻うがいまでやった関西人バリバリの私でも、さすがに今年は着る勇気がない。
どうかすぐに消えてくれますようにとの切なる祈りもむなしく、流行語大賞でトップテン入りまでしてしまったピコ太郎。今年着れないどころか来年も着れなくなった。来年の流行語大賞の時期にもきっと、去年の受賞者として絶対出てくるピコ太郎。ジャスティンビーバーよ、なぜ全世界に発信した。
一体ブラウスの元はいつとれるのだろうか。
ピコ太郎様、お願いだから衣装チェンジしてください。

気まぐれシェフ