弁護士のエッセイ

2018年04月01日
IPBAマニラ総会

今年のIPBA(Inter―Pacific Bar Association、環太平洋法律家協会)の総会はマニラで3月14日から16日まで行われ、生まれて初めてフィリピン、マニラを訪れた。なお、IPBAとは、環太平洋でビジネスローを取り扱う弁護士が弁護士間の情報ネットワークをつくる機会を提供することを目的とした団体で、1年に1度、各国の持ち回りで開催される総会が主たる活動である。

往復の飛行機はフィリピン航空を使用し、宿泊するホテルはIPBA会場となっていたシャングリラ・ザ・フォート・マニラを利用した。直行便と五つ星ホテルなので例年に比べて贅沢な旅行である。ただ、料金は10万円ちょっとと非常にリーゾナブルであった。
フィリピン航空は事前の情報では機内での映画視聴できない等のサービスが悪いという話もあったが、全くそんなことはなく快適であった。飛行時間は約4時間30分と国際線としては短い。ゆっくりと映画を1本見たら終わりという感じである。到着したのはニイノ・アキノ国際空港である。ホテルに向かうタクシーでぼられる等の悪評もあったが、高速道路代込みで約330ペソ(700円)ととても安く、かつ安心して乗れた(だが日本からの参加者には約4000ペソ(8000円)とぼられた人もいたので油断は禁物である)。ただ、ホテルまで10km弱の距離にも関わらず1時間以上かかるという渋滞ぶりであった。
ホテルにチェックインする際のエントランスでは荷物チェックが行われていた。スーツケースの中身もX線でチェックするという警戒ぶりであったが、ごく日常的に行われていて特に緊張感はなかった。午後3時ころの到着にも関わらず部屋の清掃ができていないということでスーツケースをフロントに預けて、IPBAの受付を済ませた後に会場に行ってみるとバンクーバー留学時代からの友人であるカナダ人弁護士のハーバート・小野さんがすでに会場入りしており、彼と彼の同僚と会う。夕食を一緒に行こうということで、私が社外取締役をしている「大阪王将」のフィリピン店に誘った。これが大きな間違いで、ホテルから約7kmしか離れていないMega Mallという大きなショッピング・モールの中にあるのだが、この約7kmがずっと渋滞しており約1時間30分かかってしまった。タクシー代は約280ペソ(600円)であったが歩いて行った方が早いのではないかと思った(実際には蒸し暑くってとてもそんな距離は歩けないが)。マニラにはショッピング・モールは至る所にあるようで、Mega Mallはその中でも大きく、かつ新しいショッピング・モールだった。入口には例によって荷物検査があるが、それ以外では日本の新しいショッピング・モールと何も変わることがない。むしろより高級なブランド商品が出店されているといってもいいくらいだ。その意味では、日本のショッピング・モールと百貨店があわさったようなものだった。「大阪王将」は概ね日本と同じ味を維持できており、従業員も礼儀正しく教育も行き届いていた。ただ、Flying Noodleという料理があり、茶そばを皿から箸で大量に持ち上げた宙に浮いたように見える形で提供される(空中に浮いている茶そばは台の上に乗っており台は外からは見えない。箸はその台に突き刺さっている)。茶そばの下には天ぷらが置かれており、これらを甘いソースにつけて食べるのであり、これだけは日本では絶対にお目にかかれない「なんちゃって和食」だった。値段は日本とほぼ同じくらいだった。
ホテルへの帰りも約1時間かかり、ウェルカムレセプション、ジャパンナイトで旧知の各国の弁護士と久闊を叙する。また、新たに知り合いになって名刺の交換をしたが、今回は今までに名刺交換をしたことのない国の弁護士とはあまりお会いできなかった。ただ、ベトナムからの弁護士が急増していたのには驚いた。マニラはベトナムから比較的近いことはあるとは思うが、それにしても香港で名刺交換をした時の10倍くらいの弁護士が来訪していたようにみえ、ベトナムの経済発展をあらわしていると思った。
翌日からはいつものとおり午前、午後には様々なテーマごとにセッションが開かれた。今回出席したセッションとしては「株主間契約について」、「国際的M&Aにおけるカルチャーギャップの橋渡し」、「北朝鮮制裁のビジネスに対する影響」などが面白かった。「株主間契約について」は国際合弁会社設立の際の株主(出資者)間の取り決めに関する議論である。問題の所在は国内での合弁会社に共通するものとして一般的に認識されているものと変わりないが、たとえばフィリピンでは一定規模以下の会社は60%以上が現地資本である必要があるなど国際合弁会社ならではの制約があることなどが議論を少し複雑にするものであった。「国際的M&Aにおけるカルチャーギャップの橋渡し」は、マニラ出身で東京で10年以上にわたって仕事をしていた弁護士の司会で、日本の弁護士を含めた外国で仕事をしている弁護士による報告、討論であった。特に日本と他国の文化の違いに焦点が当たることが多く、たとえば日本の会社とフィリピンの会社が顔を合わせて交渉する場合、日本側は中年以上の男性が出席し、フィリピン側は若い女性が混じることがあり、しかもその女性が決定権を持っていたりするという例を挙げ、この二社によるM&Aを成功させるためには両者の文化の違いを理解する必要があるなどというのは面白いと思った。
毎朝ホテルのまわりを走ったり、セッションの合間にはプール再度で寝転んだりして、短いながら休息も楽しんだ。ホテルのまわりを走っていて思ったのは街を歩く人が若いことである。ベトナムもそうだが若い労働力が溢れているという感じであった。
3泊4日という短い期間ではあったがマニラを楽しむことができた。次回はシンガポールでの開催である。前回のシンガポール大会は2010年であり、それから私は毎年IPBAに参加してこのエッセイでIPBAの模様を紹介してきた。約10年を経てどのように変わったかを含めて楽しみにしている。

弁護士 池田 佳史