弁護士のエッセイ

2013年06月01日
神戸と天満

今年2月、神戸市東灘区についに家を買いました。家といっても築30年ほどの年期モノ中古マンションで、値段も手ごろ、ローンは月額8万円ほどです。ただし内装は改装してからさほど年数が経っておらず、古臭さはありません。
この家ですが、終の棲家を買ったということではなく、10年ほど住んでから売って、他に移り住もうという算段です。近隣のある中古マンションは10年前の分譲時より高い値段で売りに出されていましたが売れてしまいました。うちのボロマンションにも不動産業者から売ってくれませんかというチラシが頻繁に投函されます。こういった事情に加え、弁護士登録をした7年半前からこのあたりの物件は物色して相場を見てきたこともあり、今回購入した家の値は下がらないと踏んでいます。購入物件探しのキーワードは「堅実」でした。

ところで、私の同期の弁護士も家を買う時期に入ったようで、今年の新年会では出席した6名の弁護士の内、私も含め3名が相次いで家を買うという話をしました。一人は新築戸建て、もう一人は私と同じ年期モノの中古マンションでした。どの地域でどのような物件を買うかについてはそれぞれの奥さんの威光、もとい意向が強く反映されていることはいうまでもありません。しかし、購入時期が重なったのは偶然ではなく、弁護士7年目である夫側の事情のように思えました。みなそれぞれ仕事に慣れ、それなりに自信も持って日々の業務に取り組めるようになって、事務所との関係でも事務所にぶら下がるのではなく、パートナー待遇として、あるいは事務所を独立して仕事を始めた時期だからです。
もっとも、仕事に自信を持っているといっても必ずしも将来を楽観視しているわけではありません。弁護士業界はいまだかつてなく厳しい時代を迎えており、5年後、10年後に今と同じように仕事があるとは限らないというのが私の世代の弁護士の共通認識です。さらに、家の購入時の収入水準で組める上限額のローンを組み、その後の収入減で苦しむ方を仕事柄たくさんみてきています。そのようなこともあり、同期の弁護士は家の購入に当たって非常に堅実な選択をするのだと思います。

さて話を戻して「堅実」な我が物件の周辺環境ですが、世の奥様方にいわせれば文句のない環境です。静かな住宅街であり、街路や公園がよく整備されていて治安は問題ない水準です。JRや阪急の駅が近く、駅に繋がる道路に出ればスーパーやおしゃれなカフェ、パン屋、本屋、アパレル店などが小ぎれいに並んでいます。学区もよいとか(これだけは地元民ではない私にはよくわかりません。)。
つい先日まで住んでいた大阪天満のように、あちこちで食べ物とか、その他のよくわからない匂いがしたり、飲み屋やパチンコ店が立ち並んでいたり、何日か前におっさんが立ちションをしていた路地に金髪のJK(女子高生)がしゃがんでケータイをいじっていたり、仕事から帰るサラリーマンをガールズバーに誘う客引きがいたりというような光景は見受けられません。
なるほど、東灘区ということころは便利で清潔で安全だからこそ地価は高く下がりにくいということでしょう。

しかし、天満への郷愁にかられることがあるのも事実です。おそらく、大阪市内で働く独身男性であったら、東灘区に住むより天満に住む方が、通勤が楽で夜な夜な遊ぶのに便利で楽しい街だと思ってしまうからです。人生のステージに応じて住むにふさわしい場所というのはあるのかもしれませんが、男という生き物はまじめに暮らしていてもバカで無責任な独身時代の楽しさを忘れられないのかもしれません。

弁護士 高橋 英伸