2019年株主総会の展望(昨年の総会を振り返って)
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<ポイント>
◆FDルールをふまえた株主総会での質疑応答の情報開示の検討を
◆電子提供制度を念頭においてスマートフォン等を使った電子投票の検討を

商事法務より2018年株主総会白書が出版されました。2018年の株主総会では大きな影響を与える法改正等はありませんでしたが、今後とも対応が必要なルールの新設、変更があったので、その点についての状況を説明します。
なお、文中のパーセンテージは商事法務に回答が寄せられた1727社を母数とするものです。

フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルールといいます)が導入され、2018年4月1日より施行されています。FDルールとは、概略、重要な情報が一部の者に提供された場合、速やかに他の投資家にも公平に情報提供するルールです(その概要は拙稿「2018年6月株主総会の留意事項」参照)。
金融庁は、株主総会での事業報告や株主からの質問に対する回答等もFDルールの対象となるとの見解です。
株主総会での事業報告や株主からの質問に対する回答等について会社がFDルールをふまえた対応をしたかについてですが、回答のあった会社のうち約半数が対応したと答えています。
その対応の方法ですが、対応したとした会社の90%近くが想定問答の見直し、答弁方針の確認等であり、自社ホームページに総会当日のビジュアル資料を掲載したとの回答が約5%、自社ホームページに総会当日の質疑応答の内容を掲載したとの回答が約2%でした。
この結果から、株主総会に出席していない投資家に情報を提供するという方向で対応した会社は少数派ということになります。
私見としては、今後、FDルールの浸透によって上記の情報提供という対応が増えてくるのではないかと思います。2019年の株主総会での対応の検討が望まれます。

2018年2月14日に「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」が発表され、株主総会資料の電子提供制度が取り上げられています。
同中間試案で取り上げられたのは、概略、参考書類等の株主総会資料をウェブサイトに一定期間掲載し、株主に対してはウェブサイトのアドレス等を記載した書面を送付することで、株主総会資料の送付を省略することができる(ただし株主は書面による交付を請求できるとの案もある)制度の導入です。
すでに「電磁的方法による株主総会招集通知」という制度がありますが使い勝手が悪いためあまり利用されておらず、株主総会資料の電子提供制度はこれを改良したものといえるかもしれません。
また、電子投票制度(たとえばウェブサイト上で議決権行使書面に記載されたログインIDとパスワードにより議決権を行使する方法)を採用している会社はほぼ50%あります。
上記の中間試案を念頭に、何らかの新たな電子提供制度の導入を実施または検討していると回答した会社が50%強ありました。
その実施または検討している事項としてはWEB開示が約34%で第1位であり、電子投票制度の採用、スマートフォンを利用した議決権行使が続いています。
上記の株主総会資料の電子提供制度が採用されれば、スマートフォンを含む電子機器を使った電子投票がますます増加するものと予想されます。
上場会社としては、この趨勢にしたがって準備を進める必要があるかもしれません。

なお、2019年6月に株主総会を開催する会社で京阪神での開催を予定している会社は、G20が6月28日、29日に開催されることを念頭において日程の決定や会場の手配をしなければなりません。